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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
外伝 憂鬱センチメンタル
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意味じゃないし、どこで覚えて来たんだそんな言葉!?」

 知らぬうちに子供が教育に悪い言葉を覚えている気がして戦慄したが、べつにオカマは教育に悪いわけじゃないかと思い直す。それより問題はさらに不機嫌度が増したアスフィだ。

「………私に黙ってこんな可愛い人形さんたちを作っておいて説明も無しですか、ヴェルトール?この子たちを一目見た時にピンと来ましたよ。この世界にこんなにも馬鹿正直に人形を『生物』に近づけるようなバカな職人なんて一人しかいない。そう、馬鹿な夢を掲げていた貴方です!」
「確かに馬鹿だったよ。おかげで散々後悔するハメになった」
「……聞かせてください、貴方に何があったのか」

 アスフィのどこかよそよそしかった態度が、純粋にこちらを気遣うものに変化した。
 共に上を目指して競った筈の俺がどうして表舞台から姿を消すような事態に陥ったのか、そしてドナとウォノは「何」なのか。

 だがな、アスフィ。言えないんだよ、俺は。

「スマン、それは言えない。強いて言うなら自業自得で苦しんでただけだ」

 俺は、彼女の追及をかわすように体のいいセリフで話を濁した。

「は?そんなんで私が誤魔化されるとでも思ってんですかこのバカ猫は?」
「スンマセン浅はかでしたごめんなさいってフギャァァアアアアア!?痛い痛い痛い痛い尻尾は止めて尻尾踏むのはッ!?」
『ぬ、主様ぁ〜!!』
『やめたげてよアスフィ!!シッポはダメだよ!!』

 アスフィは誤魔化せなかったよ……。
 


 = =



 この世で最も複雑怪奇な造形物は何か。
 その問いを投げかけたのも答えを出したのも同一人物だった。

『俺にとって究極の造形物ってのは、人間なんだ』
『人間が、ですか?私はそうは思いませんけど……だって人間は彫刻や絵画なんかでその造形を追及され尽くしています。人間が究極なら芸術家の先人たちは皆が究極の技師ですよ』
『それは外面だけの話だよ。確かに俺も先人たちの芸術品には敬意を持ってるし素晴らしいとも思うよ。だけどあれはその瞬間を切り取った固定的な造形でしかないだろう?人間は自ら動き、成長し、老いていく……その過程の中のほんの一部分を緻密に表現しただけなんだ。何より人間ってのは父親と母親が交わって生まれる物だろ?決して人工的に作り出すことが出来ない存在――命の神秘。これを究極と言わずしてどうするよ?』
『それはそうですが……それでは貴方は生命体を作り出したいのですか?』

 この世界に溢れる人間は、嘗て天界の神々によって生み出された神のデッドコピーだと言われている。敢えて不完全な存在として生み出すことで、神々の停止した時から切り離された存在となったのだ。そして生命体を人工的に生み出す事が出来るのは神だけ。
 だか
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