外伝 憂鬱センチメンタル
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、あまり強く注意はしてこなかった。
そのツケが、回ってきた。
「ヴェルトール………久しぶりね。本当に………」
「ン………アレかな、最後に顔を合わせてから5年くらいは経ったっけか」
やっべー、と俺は内心で脂汗を噴出させていた。そう、5年だ。5年間もこの友達と完全に音信不通状態。しかも、『完成人形』が出来たら見せるとまで言っていたのに、すっかりそれを忘れていた俺は綺麗にブツを封印してしまっていた。つまり、完全に約束を破ってしまっている。
気まずさに顔を背けながらも、ちらっとアスフィの顔を見る。……………5年の間に色気が4割くらい増してる気がする。畜生美人になりやがって、ちょっとドキッとしちゃったじゃねーか。というか待てお前、何で両手にドナとウォノをだっこしてやがる。二人も見ず知らずの人の腕の中なのにちょっと嬉しそうじゃないか。くそう、母性か。俺には親として母性が足りないのか。
「………ひどいじゃないですか。私がやっと目的に達していざ会おうとしたらどんなに探しても見つからなくて、それでも必死に探してみれば、こんな細い路地の一角に個人工房ですか?一報くらいは寄越してくれてもよかったじゃないですか……」
「………………ご、ごめん」
「……冗談です。どうせ人形に夢中になりすぎて忘れていたんでしょう?私も何年か貴方の事を忘れてたのでおあいこです」
と言いつつプイッと明後日の方向を向いてさり気ない怒ってますアピールを繰り出すアスフィに、俺は内心「忘れられたままでもよかったんだが」とぼやいた。事実、俺は『完成人形』を作る事を急ぎ過ぎた過去の自分に「焦りすぎだボケぇ!!」と叫びながらドロップキックをかましたい気分なのだ。
俺は、急ぎ過ぎた。そして『完成人形』という代物が内包する危うさと、それを作ると言うのがどういう意味を持つのかに対して無頓着すぎた。だから人形を完成させて数年、俺は生ける屍のように乾いた街を当てもなく彷徨う事になった。アルル様だけは僅かなうるおいを与えてくれたが、そのアルル様にも「急ぎ過ぎた」と言われてしまった。
俺は大口でホラを吹いた愚か者だ。その年齢で到ってはならない領域に自ら突っ込み、そして溺れかけた。大間抜けも良い所で、堅実に出世した目の前の『万能者』とは大違いだ。そして、『完成人形』は彼女が造る道具と決定的に違う所がある。
その決定的な部分を他人に悟られたら、その時点でおしまいだ。だから俺はそれを隠し、自分の作品に蓋をした。パンドラの箱と違って誰かが迂闊に開かぬよう、厳重な鍵をかけて。
で、その鍵二人は未だにアスフィにだっこされている。
『マスター。マスターってパパぁ?ママぁ?』
「パパだよ。ある意味ではママだけど」
『つまり『おかま』か?』
「そう言う
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