外伝 憂鬱センチメンタル
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精々それまでに団長になるんだな!!」
それから私達『ヘルメス・ファミリア』は長い繁忙期に突入し、私の自由時間は次第に無くなっていった。同時に彼も本格的に作業に取り掛かったのか、次第に連絡は途絶え気味になっていた。彼のことが気にならなかった訳ではないが、私自身が彼を気にかけるほどの余裕がないまでに多忙だった。
彼の事を思い出したのは、私が団長の地位に正式に就任して暫く経ったある日のこと。それまで、私は多忙さとファミリア管理、おまけにヘルメスの奔放さに振り回されて彼のことがすっかり頭から抜け落ちていた。約束の日から、既に数年が経過していた。
ヴェルトールはどこにもいなかった。
ファミリアに籍は残っていたが、ファミリアに戻ってきていないという。「逃げ出したんだろう」、と、ファミリアのメンバーは冷ややかな目で呟いて、目の前でホームの玄関を力任せにバタンと閉じた。
そんな訳はない、彼は自分の夢を諦めるほど自分に折り合いをつけるのが上手ではない。一度没頭すれば誰よりも深く造型を追求する生粋の職人肌だ。『完成人形』をつくるために作業に心血を注いでいた筈だ。
そう思って周囲にしつこく聞いて回り、それでも分からないからとうとう私は情報屋を雇った。相場を知らない所為で少々ぼったくられたが、それでやっと彼の情報を得る事が出来た。
どうやら彼は確かに『完成人形』――本人曰く、芸術を越えた究極の人形を完成させるために半年ほどオラリオの外で資料集めに奔走していたそうだ。そうして全世界のあらゆる人形の製造技術を短期間で会得した彼はオラリオに舞い戻り、あらゆる材料を基に人形の作成を開始した。しかし「究極」の名を冠するものを作ろうとするだけあって開発は難航。彼は次第に精神的に摩耗し、目はギラつき、頬は扱け、耳や尻尾の毛はまるで手入れされずに毛並みもボロボロになっていたという。
それから間もなくして、彼の行方はぷっつり途絶えていた。
私は、彼が逃げたとも思いたくなかったし、死んだとも思いたくなかった。彼は親友とライバルの中間に位置する大切な戦友だ。きっと行き詰まっているだけで、今もこの空の下で『完成人形』を作ろうと必死になっているに違いない。そう思い、仕事の合間を見ては彼を探しに出かけていた。月に1時間も探せないことなどザラだったが、それでも探した。
そして団長に就任してから更に数年が経過した頃――私は、衝撃的なものを目撃した。
『ウォノ〜、壁から小さい箱が生えてるよ〜?』
『む、中から魔石の気配がする……きっとアレは魔石の力を吸収して動くモノに違いない!』
『えっ!!それじゃ私たちと同じじゃない!!あの箱って実はアタシたちのイキワカレのお母さん!?』
『そんな筈は無かろう。母君とは子を産んだ親のこと、つまり母と
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