外伝 憂鬱センチメンタル
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かつて二人の冒険者がいた。
一人は冒険者として大成しにくいヒューマンに生まれた私、アスフィ・アル・アンドロメダ。
もう一人は道具作りの能力が低い猫人、ヴェルトール・ヴァン・ヴァルムンク。
二人はそれぞれ、自分よりも潜在的アドバンテージの高い相手との競争に果敢に挑んでいた。
「私はこの街で最高のアイテムを作成するアイテムマスターになる。ヘルメス様の下で沢山学ぶうちに、この夢だけは叶えたいって思えたの」
「アイテムマスターねぇ……つまりこの街の物作りでトップになろうってか?野心家だなぁアスフィは!……よっし!!なら俺は念願の『完成人形』を作り上げて世界最高の造型師になってやるぜ!!俺の人形見て腰抜かすなよ?」
「このまえ見せてもらった人形は腰が細すぎて真っ二つに折れたけど?抜かすってそういうことなのぉ〜?」
「う……うるせー!お前のアイテムだってダメだったろ!!前の空飛ぶ靴!!俺の身体を無視して天空に飛び去ったまま帰ってこなかったじゃねえか!!」
顔を真っ赤にして反論した彼の言葉に図星を突かれた私は言葉に詰まり、「次は飛べるのを作るわよ!!」大口を叩いては二人で笑い合っていた。まだ10代で、若かった。
恋人――とか、そういう意識はなかったと思う。
純粋に、種族的に手先が器用なドワーフ達のせいで肩身の狭い思いをしながらもひたむきに情熱を燃やす彼に触発されていた。神秘の籠った道具を作成する職人は人間よりエルフが多くて肩身が狭い思いをしていた私は、彼と自分の苦労を重ねていたんだと思う。年月が過ぎるにつれて私は結果を出していき、ヴェルトールも自分のファミリア内でその頭角を現し始めていた。
そうして1年2年と年月は流れ、私達は次第に二つ名を背負う冒険者としてこの街の物作りのトップに食い込み始めていた。『ヘルメス・ファミリア』の財政難を救ったのは私の魔道具である自負があるし、ヴェルトールはその頃になると金持ちの欲しがる大型オブジェの設計や監督を任されるほどの立場になっていた。
自分の認めた相手がこの街で活躍しているのは何故か誇らしくて、負けていられないとモチベーションを掻きたてられた。次第に二人の会話は曖昧な夢の話ではなく、次はどんなことをやろうかという具体的な進路の話に変わっていた。畑違いではあったけど、同じ作り手としての意見はとても貴重で、交流の賜物として商品化した道具も複数ある。
「実はさ……もうすぐ『完成人形』作りに入ろうと思うんだ。金も溜まったし、お許しも出た!これから腕が鳴るぜ!」
「スゴイじゃない!ま、私も次期団長が狙えるぐらいには成長したし?こうなると……どっちが先に夢の階を上りきるのか競争よね!!」
「おうよ!完成したらまずお前に見せてやるから、
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