Side Story
少女怪盗と仮面の神父 10
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
朝。
「ねぇ……今日、ハウィスが出勤する少し前になるんだけど、神父様の家庭訪問に付き合ってくれる？」
朝食中の唐突な質問に、ハウィスは
「良いわよ」
「良いの！？」
間髪を容れず、あっさり頷いた。
「噂の美形神父様でしょ？ 昨日の不自然な観光はそれが目的だったのね。たった半日で……やるじゃない、ミートリッテ」
口の端を上げて グッ と親指を突き出したハウィスは、明らかに誤解している。
「違ぁう！ そういうんじゃなくて！ あの神父は、私を宗教に勧誘しようとしてんの！ 怪しいヤツなの！」
「ふーん？ そう思うんなら断れば良いじゃない」
「何度も断ったよ！ でも、全然聴いてくれないんだもん！ 家に来るのだって、あっちが一方的に決めちゃったんだしっ」
昨夜の攻防を思い出して、ミートリッテの頬がぷくーっと膨れる。
アーレストは結局、深夜は危ないからと言ってミートリッテの反論を強引に断ち切り、ご丁寧に家の手前まで送り届けた。というか、無理矢理付いて来た。接触対象じゃなかったら、海に蹴り落として「不審者が居るぞー！」と自警団に訴え出るところだ。その場合、怒られるのは多分ミートリッテのほうだが。
明日の夕方頃にお邪魔しますねと不要な土産言葉まで残す始末で、諦める気配が全然無い。
こんな事でハウィスに迷惑を掛けたくはなかったが、未成年の立場に戻るより他にはもう、打てる手が見当たらない。ミートリッテに勧誘できる余地がある限り、アーレストは何処までも延々と付き纏うのだ。
いろんな意味でゾッとする。
「ははーん……騎手を落とす為に馬を狙ってるのか。一般には賢いと思われてる方法だけど、ミートリッテを相手にするなら無駄手間ね」
「でしょ？ 幾ら説得したって、私が宗教なんか」
「体当たりしちゃえばコロッと堕とせるのに」
駄目だ。ハウィスも聴いてない。
「はーうぃーすぅぅー」
恨みがましい目線を受けた女性は、楽しそうに肩を揺らして笑った。
「はいはい。要するに、神父様も宗教も嫌なんでしょ？ 私がちゃんと話してあげるから安心なさい。……でも」
「でも？」
「だったらどうして、神父様が居るような場所へ行ったの？」
コーンポタージュに差し入れたミートリッテの匙が、ピタッと止まる。
「宗教関係者の引き込み体質は小さな子供でも知ってるわ。しかも噂の神父様は、着任したばかりだからか敷地外は無闇に歩き回らないんですってね。関わりたくないなら近寄らなければ良かったのに」
ピッシュがくれたマーマレードを木製のジャムナイフでトーストに乗せて塗り広げるハウィスの手元を見ながら、浅く息を吐いた。
「宗教自体には無いけど、教会には興味があったんだもん」
「教会に興味？ 初耳ね」
ハウィスの口元で
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
[7]小説案内ﾍﾟｰｼﾞ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿ｻｲﾄ〜
利用規約/ﾌﾟﾗｲﾊﾞｼｰﾎﾟﾘｼｰ
利用ﾏﾆｭｱﾙ/ﾍﾙﾌﾟ/ｶﾞｲﾄﾞﾗｲﾝ
お問い合わせ
2024 肥前のﾎﾟﾁ
しおりを解除