Side Story
少女怪盗と仮面の神父 10
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
実はかなりの肥え舌・料理上手なのだが、自覚はしていなかった。
「……ああ、そうだ。昨夜、お客様とも話してたんだけど、近々村の警備が厳しくなるんですって。自警団の邪魔になるから、夜遅くの散歩は控えなさいね」
来た。
シャムロックが気を配らなきゃいけない、もう一つの側面だ。
さすがは大人が集まる夜の店。情報伝播は一番乗りか。
「警備の強化? なんで?」
素知らぬ顔で問い返すと、ハウィスは眉を寄せて怒っているような悩んでいるような、複雑な表情になった。
「それが、いきなりすぎて全然解らないの。危険な集団が村の近辺に潜伏してる所為だとは言ってたけど……名前や特徴が噂になったら相手を刺激するかもって理由で、詳細は敢えて開示しないそうよ。怪しい人間なんて影も感じてなかったのに、バーデルの軍人が顔を出した時は自分の目を疑ったわ」
「へ? 隣国の軍人が、営業中の酒場に行ったの?」
「ええ。近海組は毎日、漁帰りにウチの店を使うでしょ? 個人宅への拡散には便利だからって、村長様が案内してきたのよ。自警団員と一緒に宣言するだけして帰ったけどね。ああもう! どうせ来るならお金も落として欲しかったーっ!」
真面目が凝り固まった印象の軍人達を思い出した。
あれが緊迫した内容を告げに現れたと聞けば、白けた酒場の空気も想像は容易い。
その相手にお金を落として欲しかったと思えるハウィスは、実に商魂逞しい。
それにしても
(詳細を開示しないって、おかしくない? 刺激も何も、いつだって気分で行動するのが当たり前な海賊の正体を隠してても、村のみんなが咄嗟に反応しづらくなるだけだよね。心構えとか逃走経路の意識とかを考えれば、絶対に前以て教えといたほうが良い筈)
ただでさえ後手に回ってるクセに、そんな悠長な対応で本当に大丈夫なんだろうか……などと、うっかり軍人側を心配してしまったが。
直後、海賊共が捕まっても困るんだったと気付いて頭を抱える。
本心では「賊」が付く有害生物なんかさっさと捕まえて欲しいのに、奴らの喉が一斉に潰れない限りは願うことすらままならない。
世は無情だ。
「バーデルの国境警備隊も増員するそうだから、もしかしたら果樹園の仕事にも影響出るかもね。話を聴いたピッシュの判断次第だけど」
「今日と明日は保管庫での作業が中心になる予定だし、大丈夫じゃないかな。でも、長引くのは困るかも。収入が減るぅーっ」
勿論、シャムロックにとっては収入以前にハウィスの安全が掛かった大問題。どうせ期日は決まっているのだし、それまでの間は何処か遠くへ消えててくれないかと真剣に思う。
(……無理だな。見張りだもんね。その見張り力で軍の動きを察してるとしても、村の周りからは離れてないよね。多分)
あの指輪にどんな価値があるのか
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ