暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 10
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の手元を見ながら、浅く息を吐いた。

「宗教自体にはないけど、教会には興味があったんだもん」
「教会に興味? 初耳ね」

 ハウィスの口元で、サクッと気持ち良い音がする。
 今日のトーストも上手く焼けていた。

「正確に言うと教会じゃなくて、教会でも使われてる物に興味があったの。ちなみに、わざと隠してた」
「……どうして?」

 トーストを味わい、喉に流してから首を傾げるハウィスに合わせて、口に運んだコーンポタージュを咀嚼(そしゃく)し、飲み込んだ後、顔を逸らして答える。

「恥ずかしいから。」
「……恥ずかしい?」

 ハウィスを横目に覗くと、意味が解らないのか、しきりに瞬いていた。

「今はこれ以上言わない」
「なぁに? 気になるじゃない」
「アリア信仰に用は無いとだけ明言してこの話は終わりです。根を掘り葉を(むし)るつもりなら、貴女の愛娘は今この瞬間即座にグレます。そして、以後の食事当番を一生拒絶します」
「なっ!?」

 酷く動揺したハウィスが、椅子を蹴倒して立ち上がる。

「ズルい! 私の楽しみを盾にするなんて!」
「それがお嫌でしたら、どうか今後も、優しく見守ってくださいませね? ハウィスおねぇさま?」
「くっ……! 卑怯技ばっかり身に付けて、この娘は! 酷いわっ!」

 ハウィスはミートリッテの料理が大好きだった。
 味付けと火の通し加減が、毎回ちょうどいいらしい。
 酒場で出される(まかな)い料理よりずっと美味しいし好みだとまで言われれば、悪い気はしなかったが……
 まさか、本気で泣くほど好かれてるとは思ってなかった。
 ハウィスの頬にぽろぽろ溢れる大粒の涙を見て、内心うろたえてしまう。

「私の興味に首を突っ込みさえしなければ、ちゃんと作るよ。だから、ね? 落ち着いて食べよう?」

 表面上はゆったりと微笑み。
 テーブルの上にあるハウィスの分のコーンポタージュを指し示す。

「覚えてらっしゃい……。私のご飯を(おびや)かした罪は重いわよ!」

 すんっと鼻を鳴らして椅子を起こし、座り直すハウィス。
 これは一応、褒められているのだろうか。

(なんか可愛い……けど、罪って。そこまでなの?)

 (さじ)に乗せたコーンポタージュを口に含む。
 コーン独特の濃厚な甘い香りが、ミルクの柔らかい舌触りと混ざり合い、舌先から鼻の奥までふんわりと広がった。
 隠し味の香辛料が野菜に含まれる若干の青臭さとくどさを消し、甘さ故の飽きを感じさせない効果も発揮している。
 噛めば噛むほど旨味は増し、飲み込む瞬間には液状ながら充分な食事感を得られた。

 が。
 (から)になった(さじ)を見つめる作り手の感想は

(……いつも
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