閑話 ー 二刀流 ー
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
偶然としたら物凄い確率だと思いながらも、内心では焦りと後悔の感情が渦巻いていた。
だがそれを外面へと出さずに、ユーリの挙動に注意を払っていると、彼は何か考える素振りを見せると、窓を操作し小瓶をオブジェクト化するとこちらへと放ってくる。 中身は赤黒く、粘土の高そうな液体で、沸騰したように絶えずボコボコが泡が浮かんでは破裂している。 新種のポーションが発見されたという噂は聞いた事がないし、いかんせん怪し過ぎる。
ユーリに疑わしげな視線を向ければ、顎をクイッと上げ、手の中に収まるガラス瓶を示す。 飲んでみろ、ということらしい。
(……毒、なんてことないよな?)
盛るなら盛るでこんな堂々とはしないだろうし、第一、一服盛られる心当たりがない。心を決めると、瓶を持ち直し、栓へと手をかける。 キュポンと音を立てて栓が抜けると瓶から漂ってきたのは、意外にも柑橘系の爽やかな香りだった。 見た目と反する 香りに意外性を感じつつ、口をつけ、グッと中身を呷ると、驚愕に目を大きく見開いた。
「こ、これは……! 舌と喉を焼くような刺激に、この甘ったるさ! コーラか!?」
「そのとおり」
「おおっ……!」
流暢な発音でそう言うと、ユーリは会心の笑みを浮かべた。 残る半分を飲み干すと思わず感激に体が震える。 子供から大人まで幅広い年代層に愛されて、一部の熱狂的なファンからは『血液そのもの』と言わしめるほど人気なーー俺も過去に一度似た何かを探したが、諦めたーー清涼飲料をまさか、この世界まできて飲めるとは思ってもみなかった。 思わず出処を訊ねて見ると、意外にもユーリのお手製だった。
「ユーリ、これって……どこのだっ!」
「いや、店売りじゃない。 〈料理〉スキルの応用だよ」
「……なんと!」
売れる! と直感的に確信する。 SAOにログインしている大半のプレイヤーはきっと喉から手が出るほどこの懐かしの味を欲しがるだろう。 だが、すぐにその考えを改める。
「……俺の分が無くなったら困る!」
「……ば〜か」
ユーリに軽く罵倒されながら冷ややかな視線を向けてくる。 だが、世紀の発明をした偉人は意外にも表情が優れなかった。 ガリガリと頭を掻きつつ、伏せ目がちにユーリは理由を語った。
「……色と、あと飲んだ時の感じが違うんだよね。 この手のゲームが液体の表現が苦手っていうのもあるかもなんだよなぁ〜」
「は、はぁ〜……」
発明者様は、どうやら理想が高いらしい。
しかし、謎だ。 てっきり俺が今までひた隠しにしてきた〈二刀流〉スキルについて訊ねられると思っていたのだが。 一体どういう風の吹き回しだろうか。 もしや、出現条件を訊く対価として渡してきた
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ