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ソードアート・オンライン 神速の人狼
閑話 ー 二刀流 ー
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直し、状態異常(バットステータス)の一つである〈転倒〉状態に陥り、動けずにいるゴブリンへと二刀の剣を突き刺し、介錯する。 声とも言えない悲鳴を上げ、爆砕したのを見届けるとすでに〈転倒〉から解放されたゴブリンへとターゲットを向ける。 残る気力を振り絞り、二体を屠るために〈二刀流〉の上位剣技を発動させた。

「らああああ!!」

 リスクを度外視した両手の剣での攻撃。 右の剣で中段を斬り払い、間髪入れずに左の剣を突き入れる。 加速する思考の中、亜人たちへと夢中で剣を振り続けた。 甲高い音が立て続けに鳴り、星屑のように飛び散る白光が飛び散り、薄暗い迷宮区内を照らす。 二刀流 上位技〈スターバースト・ストリーム〉、数の暴力と呼べる16連撃という圧倒的な手数が必死に武器防御をしようとするゴブリン二体を押し潰し、最後の一撃が肩から胴にかけてバッサリと切り裂いた。


  * *
「ふぅ〜……」

 周囲をゴブリンたちの亡骸とも言える青白く発光するポリゴン粒子が照らす中、アクセラレートされた思考が通常へと戻ったことで軽く目眩を感じた。 いつもの癖で〈索敵〉を行い、周囲に敵やプレイヤーがいない事を確認すると大きく息を吐き、力を抜いた。

 戦闘終了。 左右の剣を払い、カチンと音を立てて背中の鞘に収める。ドサリとひんやりと冷たい床に腰を下ろしつつ、ーー視界の左上ーー自分の命と同期しているHPバーへと視線を合わせれば、ほぼノーダメージでの戦闘だった。 安全マージンを満たしているものの、レベル差がかけ離れているわけではないゴブリン隊を余裕で屠った〈二刀流〉スキルの規格外さを改めて痛感する。

〈ビーター〉として蔑まれてきたが、〈二刀流〉は〈チート〉そのものである。 バレた時の恐怖が脳裏を掠め、ぶるりと体が震えた。

 短い休憩を終え、立ち上がると次のエリアへと移動しようと歩みを進める。 が、突如パチパチパチと乾いた音が誰もいないはずの迷宮区内に響き渡った。 足を止め、振り返るなり、〈エリュシデータ〉を抜剣し音源の方角へと剣先を向けると、黒いフードで顔を隠したプレイヤーが壁に寄り掛かりながら、こちらを眺めていた。

「……誰だっ!」

 返事はない。 代わりに、黒ローブのプレイヤーの右手がフードへとかけられ、降ろされた。 迷宮区の淡い照明に晒されたのは、透き通るような銀糸を持った少年。 そして、頭からは髪色と同系色のとんがりが二つひょこりと立っていた。 あんな面白……いや、奇抜なアバターをしたプレイヤーはアインクラッド広しと言えど、一人しか知らない。 〈神速〉の二つ名で知られるプレイヤー、ユーリだ。

「……見てたのか」
「まぁ……偶然ね」
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