冴島 大河
第一章 刑期中の悲報
第四話 交換条件
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周りはどんどん開発されていく中、この公園だけは昔のまま存在し続けていた。
殆ど廃れているようにしか見えないが、それでも潰されることはない。
そんな公園に1人、ベンチで一服する男がいた。
「捜したで、宮藤」
真島は一服する男に向かい、そう言った。
金髪で極道らしからぬ格好。
思わず冴島は眉をひそめ、宮藤を凝視する。
「真島さんじゃないですか。それにお隣は、伝説に近い男の冴島さんですね」
「なんやワレ、俺のこと知っとんのか?」
「勿論じゃないですか。極道18人殺しは、もはや伝説ですよ」
煙草の煙を吐く宮藤の態度が、気に食わなかった。
年功序列という訳ではないが、ふんぞり返るその姿は目上の人に向ける態度ではない。
宮藤は煙草をすぐに消し、ベンチから立ち上がる。
「そんなことより真島さん、用があってこんな所まで来たんですよね。どうされましたか?」
「……お前が、桐生ちゃんの情報を持っとるって聞いたからや」
宮藤の目つきが、一瞬だけ変わる。
だがすぐに笑顔に戻り、肩をすくめた。
「桐生さんは生きています。現在、宮藤組で監視しています」
「場所は……?」
その問いに答えず、宮藤は再び煙草に火を点けた。
真島は、苛立ち混じりの舌打ちを漏らす。
拳を作って耐えているその姿は、桐生を想っての行為だとすぐにわかった。
したくて耐えている訳じゃない。
全部、桐生の為なのだと。
だがそれを嘲笑うかのように、宮藤は笑った。
「取引しませんか?真島さん」
「取引やと?」
「正面向いて戦ったら、絶対俺は負ける。それ、嫌なんですよ。だから、交換条件。真島さん、俺の下につきませんか?その代わり、情報は渡します」
「何っ!?真島を手駒にする気か!?」
黙って見ていた冴島だが、声を出さずには居られなかった。
だが隣を見て、更に冴島は驚く。
真島の顔に浮かぶ、迷いの表情。
半年前を思い出す、あの時の苦悶の顔。
桐生の宝物だった遥を傷つけさせない為、自身を犠牲にしたあの時。
その時と、殆ど同じ顔をしている。
迷う必要はない、断るだろう。
そう思っていた冴島にとって、意外な反応だった。
「ワシが耐えれば、桐生ちゃんは助かる」
ボソッと小声で言った真島の言葉に、悩んでいる理由がわかった気がする。
やはり、桐生の存在だ。
確かに条件に乗れば、桐生が助かるかもしれない。
しかし、簡単に事が上手く運ぶとは思わなかった。
いずれ宮藤は裏切るだろう。
真島も桐生も、もしかしたら両方失うかもしれない。
その考えを捨て切れるまで、宮藤の条件に乗る訳にはいかなかった。
「真島、神室町行くで」
「せやけど……
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