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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
3.SES計画U
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はあった。しかし柳田の気迫は本気で相手を切るものだ。これまで巧は死ぬ可能性があるような訓練はしたことはなかった。通常の訓練で死ぬわけがないし、対G訓練でもベルトで体を固定しているから危険性はない。剣術の訓練も模擬刀を使っていた。柳田のもつ刀の光を見ていると自分が殺されてしまうという恐怖が巧を襲った。
しかしここで引いても意味はない。『死の八分』を考えれば、この程度乗り切れなければどの道自分はBETAに殺されるだろう。柳田が自分の技量に合わせて手を抜いてくれるのに対してBETAは巧の都合などお構いなしに殺しに来るのだろうから。
「はい。死ぬ覚悟など出来てはいませんが、それが生き残る道であるなら…。」
(こんな子供にここまで言わせなくてはならんとは……先達として不甲斐無いな…。)
強い気持ちを込めて応じる巧を見て柳田は思った。
「では抜け。お前は本気で斬りかかってきても良いぞ。お前の腕は大体分かる。普通の子供としては大したものだが、武家では幼少のころから剣を握る。はっきり言ってお前では俺に傷一つ付けられないだろう。だがそれでも良い。恐怖に縛られた時こそ剣を振れ。畏縮せず、生き残るという強い気持ちを持って戦うんだ。」
「分かりました…。では行きます!」
刀を抜き構える。真剣は初めてだったが、重さや重心位置は模擬刀と変わらない。人に凶器を向けるというのは気が引けたが、擬似的とは言えこれは命の遣り取り。相手は自分など及びもつかないだろう斯衛の衛士。
巧は雑念を振り切って刀を振るった。
「はああぁぁぁぁっ!!」
柳田の刀を払って踏み込む。巧と柳田では間合いの広さが全く異なる。巧が柳田に切りかかるには相手の間合いよりも二足分は踏み込まなければならない。
狙いは首筋。面は身長差から言って難しいし、払った刀を切り返しての胴は振りにくい。しかしそんな攻撃が柳田に通じる訳もなく、巧の刀は易々と防がれた。そして鍔迫り合い。そこで柳田は攻勢に出る。
「ふんっ!」
息を吐き出すとともに巧を吹き飛ばす柳田。大人と子供の圧倒的な力量差にあえ無く巧は吹っ飛ばされ道場の壁に激突した。
「ぐぅっ…。」
息が詰まる。分っていたことだが全く歯が立たない。技量以前に力の差があり過ぎた。どんなに訓練を積んでも子供は子供。斯衛の剣士からすれば赤子の手を捻るのと同じ。今この場において、柳田は絶対的な強者だった。
「ほらどうした!今度はこちらから行くぞ!」
柳田が大上段に振りかぶって巧に迫る。迫りくる柳田はその気迫もあってか山のように大きく見えた。巧には柳田が鬼に見えた。自分の命を刈り取りに来る巨大な鬼。事前に力は抑えると言われていたが、そんなことはもう巧の頭にはない。とにかく怖かった。しかし動かなければ死ぬ。その思いが辛うじて巧を動かした。
上段から振り下ろされる斬撃を必
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