暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX 〜漆黒の竜使い〜
episode8
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「……わ、わたし。 私……っ」
「な、なんですか華蓮さん……」

涙で霞む視界に映る楓さんには慌てた様子は既になく、真剣な眼差しでこちらを見てくれている。

「わ、たし……負け、ちゃいました」
「……華蓮さん」


葵さんが実は斎王の手先で、信じてたのに裏切られて……けど、それよりも悔しかった。 〈真紅眼〉さえいれば誰にも負けないって思っていたから。 けど、マトモなダメージすら与えられずに完封されて、何も出来ないままで負けた。 心の支えの柱をポッキリ折られたみたいに涙が溢れて、止まらない。
涙で濡れる視界の中、私の事を黙って見つめていた楓さんが不意に手を伸ばす。 はたかれると思い、体を固めたが衝撃はいつまで経っても襲ってこず、代わりに温かなぬくもりが伝わってくる。

「……だいじょぶ、ですよ」
「……ぇ?」

ギュッとほうようを受け、戸惑った。 私の事を高く評価してくれていた彼女を失望させてしまったとばかり思っていたから、なぜこうなったのかわからない。 ぽんぽんと頭を撫でながら、楓さんは続ける。


「……辛かったですね。 苦しかったですよね。 別に負けたっていいんです。 勝敗をつけなければならないデュエルは、いずれは負けがくる。 むしろ、今までが出来すぎだったんです」
「……かえで、さん」


慈愛のこもった笑みが突然、歪む。 悲しそうな表情を見せ、彼女は続けた。

「けど、私もマネージャー失格ですね。 貴女がここまで悩んでいるのに気づけずに、貴女の戦果に酔いしれた……。 勝つ事に対し責任感を持っていた事は薄々と感づいていました。 けど、気づいた頃には、……。 全然まだまだですね、私は」
「そ、そんなことない、ですっ」

突然自らを責め始めた楓さんの言葉を慌てて、否定する。

ーー私が此処までやってこれているのは一重に彼女あってこそだと思う。 だからそんな事を言わないで……?

うまく喋れないままでそう伝えると、目尻に浮かんだ雫を指で払うと彼女は微笑んだ。

「ありがとうございます。 けどね、華蓮さん。 貴女も背負うことはないんです。 負けたら、また勝てばいいんです。 それで納得がいかないのなら、相手をコテンパンになるまでのしてしまえばいいのです!」
「……はい。 ハイ!」

いつしか涙は止まっていた。 残ったのは、少しの後悔と彼女の本当の言葉を聞けた嬉しさ。 そして、また勝ちたいという気力が沸々と湧き上がってきた。


* *


「ハァ〜、サフィラに宣告者にハンデスと来ましたか……。 彼女も中々にエゲつないですねぇ〜」

そう言うとマグカップを傾け、一息吐いた。
数十分時間を置いて私が落ち着くのを待って
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