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歌集「春雪花」
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 花ぞ散る

  春の嵐の

   吹き荒ぶ

 卯月の空の

    心許無き



 強風に煽られ、次々に花弁を散らし行く桜…。

 空には暗雲が立ち込め、まるで訪れた春を憎むようにさえ感じる…。

 どこまで眺めても…空は閉ざされたまま…。
 風は安らぐことを許さず…その声を上げて私を嘲笑っているようにも思えた…。

 彼を想わない時はなく…春は私を悩ませる時節でしかなくなった…。

 だが…この空は…私に新たな不安を与えるだけであった…。



 愛おしき

  君の影なき

   山里の

 花ぞ散りなむ

     春の黄昏



 忘れることも出来ず…彼への想いを引き摺る…。

 彼がここを出て一年以上経った今でも…未だ愛して止まない…。

 四季は春…皆未来を思い描き、夢を見れる時季だと言うのに…私は溜め息ばかりとは…。

 見れば先日の強風に耐えた桜も散り始め…彼と見たかったと言う思いばかりが私を侘しくさせる…。

 日も陰り…そんな自分の影だけが落ちた春の黄昏…。





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