肆ノ巻
御霊
2
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螺蔚姫。
前田の…。
私から兄上を奪おうというの?
そんなことがあっていいの!
私が徳川家で癇癪を起こして暴れ回ると、呆れた誰かが教えてくれた。
若の正室は前田の姫だ。それは二人が産まれる前から決められていたんだ。誰が何と言おうと、どうにもならない。本人達が嫌がってもだ。だからおまえも、兄をとられたようで悔しいのかもしれないが、諦めて兄の幸せを祝福してやれ、と…。
諦める?笑ってしまう。諦められる訳が無い!
私には、兄上が居てくれればそれで良くて、私を一番愛してくれたのも兄上で、兄上が居なければこの世には何の未練も無いと言うに!
それなのに、兄上の正室を約束された女が存在して、私はそんなことも知らずに兄上が正室として迎えたいと思う女が居ないと愚かにも喜んでいたなんて!
いや、いいの。兄上の正室に収まる女はいくら居ても良いのだ。名ばかりの正室であってくれたなら!
ただ、その女が、兄上の心も持っていくなんて、そんなことは絶対に許しはしない!
私の中で、憎悪が溢れる。
憎悪が溢れて、殺意に変わる。
許さない。
許さない。
許さない!
私から兄上を奪うなんて。
絶対に許さない。
殺してやる!
それからすぐに、私は死んだ。
強い憎しみだけが、肉体も無い虚空に残る。
ぽつんと、誰にも気づかれること無く残っている憎しみ。
…許さない。
そう、許さない。
前田の瑠螺蔚姫…。
心に刻みつけたその名を呟く。
幸せになるのは、私が許さない。
殺してやる。
殺す。
殺す。
コロス…。
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