肆ノ巻
御霊
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口からこぼれ落ちたのは頭で考えていたことと違うことだったけれど、自分の言葉にあたしは自分で笑った。高彬もつられたように少し口元に笑みを浮かべて、それから気分を変えるように自分で涙を拭った。
「―…忠実殿から」
「うん?父上?」
イキナリ出た父上の名前に目をぱちくりさせると、高彬は頷いた。
「忠実殿から、瑠螺蔚さんの骸が消えたと聞いたんだ。忠実殿が瑠螺蔚さんを前田の分家に運んでいる道中、いきなり輿が軽くなったと、そう、聞いて…忠実殿はそんなことを言ったら僕を惑わすと慮って隠しておられたんだけど、僕の義兄が口を滑らせて偶然知ってね。それを聞いた時から、もしかしたらと、いやでもそんなことあるわけはないと、僕は…」
高彬は言葉を切ると、あたしを正面からまじまじと見た。こっちが恥ずかしくなるぐらいに。
「…なによ」
思わずあたしは顔を背けてぶっきらぼうに言う。
「正直、今も怖いよ。これは僕が見ているいつもの夢で、目を覚ましたら当然のようにあなたはどこにもいなくて、それでも僕はあなたを探しながら客間に足を向けて、広がる空虚な空間にまた絶望するんじゃ無いかって」
高彬は震える声でそう言った。はっとあたしが顔を戻すと、今度は高彬が苦しそうに目を逸らす。
「違うわ、高彬。あたしはいる。ここにいるわよ」
「夢の中の瑠螺蔚さんもいつもそう言うんだ。でも目覚めるといない。嘘ならもういらない。真実が欲しい…」
高彬はそう言うとあたしを強く抱きしめた。
「もう幸せな夢は見たくない。目覚めたくなくなってしまうから」
「…ッバカーーーー!!!」
あたしはいきなり高彬の胸を突き飛ばした。不意を突かれた高彬はあっけないほど簡単に畳に腰をつく。何が起こったかわからずただあたしを見あげる高彬の鼻先に、ズビシ!とあたしは人差し指を突きつけた。
「まず、言っておく!あたしは紛れもなくホンモノかつこの世に二人と存在しない超絶美麗な前田の瑠螺蔚姫よ!わかった!?」
高彬は目をぱちくりとさせながらも勢いに飲まれたようにコクリと頷いた。
「そこんとこしっかしばっちし頭に叩き込んどきなさいよ!二度と…そんな夢は見ないように!」
我こそ正真正銘の瑠螺蔚だと自分で告白しちゃってるがもうこの際細かいことは気にしない。
「次に!勝手に死んでゴメンナサイ。でもあたし女々しい男はキライ!今回は、何でかこうして生きてるけどもし…」
あたしは高彬に
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