最上級のお礼と姉
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死んじゃうかと、おも、おもって…!うわああああぁん!」
あたしは小さいこどもに戻ったかのように、ぶっさいくに泣きわめいた。
ラトゥミナ族の彼は、そんなあたしを、嫌な顔一つせずにそっと優しく抱き寄せた。あたしは抵抗もせず促されるまま、彼の広い胸にしがみつく。
「しかし…もう、あんな事をしようとしてはダメだ。いくら弟のためとは言え、キミのような女の子が、自分を犠牲になどしてはいけない。いいね」
あたしは言われている意味もわからずぐずぐずと鼻をすすりながら頷いた。いっぺんに泣きすぎて頭が痛い。
「名は。何と言う?」
「ノエルです。この子はノエルと言うんです。本当に、ありがとうございましたっ!」
「ああ、いや、違う。キミの名だ」
「え、あたし?…サラです。サラ…」
あたしは酸素が回っていない頭でぼんやりと言った。
「サラか。キミに似合った美しい名だ。わたしの名は、アベル。ラトゥミナ族のアベル。サラ、困ったときは、わたしを頼りなさい」
「待って!」
彼…アベルさん、いやアベルさまがあたしを優しく離して立ち上がった。別れの気配に、あたしは慌ててアベルさまの足にしがみついた。
「待って、待って下さい…!お礼は、お金は、どうしたらいいんですか…!」
「いらないよ。何もいらない」
彼は困ったように笑っている。ああ、いやだな、困らせたいわけじゃ無いのに…。
それにしてもこの人、途轍もなくいい人過ぎる!あたしにできることなんて限られているけれど、どうにかしてお返ししなければ!
「いけません!わたしのこの感謝の気持ちはどうしたら良いんですか!?」
「本当に、なにもいらないよ。私がやりたくてやったことだからね」
「それではわたしの気が済みません!…あ、これ、せめてこれを受け取って下さい!金貨四十枚には遠く及びませんが、これがあたしたちが持ってるお金全部です!」
あたしは懐を探って、お財布代わりのずた袋を出すと、立ち上がってそれをそのままアベルさまに押しつけた。が、それをあたしの手ごと包み込んで押し返すと、アベルさまは優しく笑いながら首を振った。
「とっておきなさい。何かあったときのために」
「…そんな…」
今度困るのはあたしの方だった。あたしだってわかってる。金貨四十枚を、ぽんと払おうと言ってくれるような人が、こんなはした金、欲しがるわけも無いって事は。
でも、じゃあどうしたらいい?これじゃあたしの気が全然済まない。
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