第百五話
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たいようで。セブンのサインと『ルクスへ』と書かれたチケットを見せつけてくる彼女は、こちらからはとても微笑ましいものだった。
「ああ、ルクスも喜ぶよ」
「でしょう? それじゃあショウキくん、ユウキ、ダスビダーニャ!」
ロシア語で『さようなら』だったか――セブンのファンであるルクスが喜ぶところを想像していると、セブンはその音楽妖精の翼を広げると、ついでにこの層を見回りたいのか、どこかへと飛翔していく。その小さい姿から本当の妖精のようだったが、空中に飛翔することで翻ったスカートに、慌てて空から目を逸らした。
「ショウキ、どうしたの?」
「……いや、何でもない」
それに気づいていないらしいユウキは、空を飛翔するセブンに手を振りながらも、不思議そうにこちらの顔を覗き込んできた。もちろん馬鹿正直に言える訳もなく、曖昧にごまかして顔を背けた。
「……変なショウキ。あ。それじゃあボクも、スリーピング・ナイツのみんなと用事があるんだ!」
「用事?」
この練習が始まるまでの水中とは、まるで別人のように違う動きで空中に飛翔すると、その翼でフワフワと浮遊する。どんな用事なのか問いかけようとした俺の眼前に、一枚のチケットがユウキから差し出されていた。
「はい、ボクからのお礼! セブンと被っちゃったけど……って、もちろんライブじゃないよ?」
一瞬ユウキまでライブでもするのかと思ったが、もちろんそんな訳もなく。差し出されたそれを受け取りながら見ていると、どこかの店のペアチケットのようで、これを持っていくと特別なメニューが頼めるという代物らしい。
「貰ったんだけど、ボクには行く相手もいないし。リズとのデートにでも使ってよ!」
「……ありがとう」
アスナと一緒に行こうかとも思ったんだけど、キリトに悪いしね――と語りながら、慣らし運転のようにクルクルと旋回するユウキと、貰ったチケットを交互に見ながら。ところでこのチケットを貰った――ということは、このチケットをユウキにあげた某氏は、ユウキをデートに誘ったのではないだろうか。
「今日はありがとね! ちょっとスリーピング・ナイツのみんなと、フロアボス倒してくる!」
「え」
デートを申し込まれたのではないか、などと聞くよりも早く。ユウキは衝撃的な発言だけを残して、その一瞬後にはどこにも姿はなかった……相変わらずの神速に、もはや苦笑いも出て来ない。
「……ふぅ」
色々終わった後に色々渡され、何にせよ今日の用事は終わったようで、自然と息を吐いておく。他のメンバーにも渡すセブンのライブチケットに、ユウキから貰ったペアチケットをアイテムストレージに入れ、終わった証拠に全身を伸ばしていると。
――殺気
「…………ッ!
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