第百五話
[7/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
たのは、恐らくはスメラギ流のジョークであるらしく。こちらも小さく笑みを浮かべると、感謝しながら頭を上げる。
「ただ詳しくは言えないが、セブンに実験と目的があることも確かだ。俺は助手として、彼女を手助けするだけだがな」
「ああ……そうだな」
……少し、スメラギという人物が分かった気がした。今度店に来た時は、少しサービスでもしてやろう――とは思ったのは確かだったが、ここからが大変なところだった。
「それでショウキ。どこか、セブンをよく見張れる場所はないか」
「……帰ってやれ」
――それから激闘を経て何とかスメラギに帰還していただき、ひとまずは誰かの気配のようなものは感じなくなった。スメラギが《隠蔽》スキルの質を上げてきた、という可能性も無くはないが、彼の良心をひとまず信じることにする。……いや、良心を信じればまだセブンを見守っていそうだが。
スメラギは過保護なんだから――とセブンが愚痴っていたが、今までその立場から仕方ないとは思っていたが、これから少しセブンに同情することにする。本人としては、真面目に真摯に彼女の為に、と仕事をしているのが厄介そうだ。
「悪い、泳げてるか?」
「あ、ショウキ! もう完璧だよ!」
「ふふん。ま、このわたしにかかればね!」
慌てて二人が泳ぐ水場に戻ってみると、ユウキにセブンがどちらも、今までも嘘のように水場に馴染んでいた。……ただ、その手にはしっかりとビート板が握られており、どうやらあと一息のところであるらしい。
「よし、じゃあビート板を手から離してくれ」
「えっ!?」
「えっ」
思ってもみなかったような驚愕の声をあげられ、むしろこちらが驚いてしまう。ずっとビート板を持って泳ぐつもりだったのか、それともずっと使っていて愛着が湧いたのか。もしも愛着がついたならば、制作者冥利に尽きるというものだが、水に顔をつけたまま泳げるようになった彼女たちに……もうあのビート板は必要ないのだ。
「泳ぐまであと一歩だ。その為には……そのビート板を離さなくちゃいけないんだ」
「そっか……そうだよね……」
「ええ、寂しいけど……」
ドキュメンタリー番組ならば、壮大なバックミュージックが流れそうな、彼女たちとビート板との涙の別れ。この日のために制作した結果、何故か持ち手が柄になった上に仕込み刀が入った、完全にビート板としてはイロモノなアレを――そこまで気に入ってくれるとは。その様子に制作者としても涙しながら、俺はアイテムストレージのメニューを選択する。
「今まで……今までありがとうわぁ!?」
長くなりそうだったので、ユウキがビート板に語りかけている間に、二つのビート板をメニューからアイテムストレージにしまい込む。当然なが
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ