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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第十四話 裏腹
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姿は戦う戦士ではなく、一人の怯える少女の姿があった。
なぜこんなことをしてくるのか。
そんな疑問を抱くが、恐怖心がそれすらも塗りつぶしていく。
「たす、けてぇ……」
そして口から漏れたのは、助けを求める言葉だった。
怖いことがあったとき、いつも助けてくれる人のことを必死に思い出してしまう。
自分を助けてくれる、ヒーローは――――、
「お兄、ちゃん――――」
ふと脳裏を過ぎったのは姉の雪鳴ではなく、憎んでいたはずの小伊坂 黒鐘だった。
ヒーローと言う単語が、男性の人を連想させたからだろうか?
ハッキリした理由は分からないが、柚那にとって助けてくれる、助けて欲しいと思った相手は小伊坂だった。
こうして自分が恐怖に飲み込まれ、絶望に染まってみて初めて気づいたことがあった。
五年前、黒鐘が姿を見せなくなったことは雪鳴に多大なストレスを与えたのを柚那は側で見ていた。
雪鳴は黒鐘のことが大好きだったから、いなくなったことが辛かったのだろうという事はすぐにわかった。
だからそんな雪鳴を悲しませた黒鐘を許せないと言う感情があったのは事実だ。
――――ならば、黒鐘が姿を見せなかったことに対して柚那本人はどんな感情を抱いていた?
雪鳴の悲しみを置いて、柚那自身の感情はどうだった?
柚那もまた、黒鐘と一緒にいる時間を過ごした一人だ。
彼といる時間が楽しかったし、彼のことを兄のように慕い、いつしか『お兄ちゃん』と呼んでいた彼が姿を見せなくなった。
それに対して柚那は何を思った?
――――寂しかった。
柚那もまた、雪鳴と同じく寂しかったのだ。
大好きな兄が帰ってこない。
側にいてくれない。
それは柚那だって寂しいと感じ、寂しくて涙を流したこともあった。
また会いたい。
会って、一緒に遊びたい。
そう思っていた。
だけど雪鳴が悲しみ、苦しんでいる姿を見てその感情を押し殺してしまった。
いや、彼を憎み、恨むことで寂しさを紛らわせようとしたのかもしれない。
そして修練に励んでさらに気を紛らわせて、忘れようとした。
大好きな気持ちを。
お兄ちゃんと慕う感情も、何もかも。
だけど、本当は――――、
「お兄ちゃん……お兄、ちゃん……」
服の隙間に入り込んだ枝が肌を刺激する。
もはや抵抗する力もなく、涙と声だけが漏れるだけ。
涙と絶望で視界が歪み、現実を否定するために目を瞑る。
視界が黒で染まった時に柚那は悟る。
(アタシ、死ぬの?)
このまま枝に侵食され、締め付けられて死ぬのだろうか。
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