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トンデケ
第十話 地球の出産
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「違う、そんなつもりはなかったの!」

「俺はお前に殺されたんだ。」

「違うんだってば!!」

「罪人はこの川を渡っちゃいけないんだぜ。」

「辰郎… 待って…」

辰郎が恐ろしい形相でにじり寄ってくる。

「罪人は、罰を受けなくちゃな。おーら、地獄へ落ちろっ!!」

床が突然、底知れぬ闇へと変わった。

「ひゃあっ!!」

百香はひっくり返って、暗い穴を真っ逆さまに落ちていく。

「たすけて〜〜!! 誰かぁ〜〜!!」

百香の悲鳴は虚しく地の底へと消えていく。
地獄へと続く深い闇へ…。





「圷さん、圷さん、起きてください、大丈夫ですか」

薄目を開けると、武井とキャシーがこちらを見下ろしている。
体を起こし頭を押さえる。少し頭痛がする。
そこは平らなベッドの上であった。
周りには同じベッドがずらりと何列にも並んでいる。

「武井さん、ここは…」

「どうやら我々は、ここで長時間寝かされていたようです。」

「アクォーツさん、うぬされてたよぅ、クワイ夢見れたの?」

キャシーのへんてこな日本語に、百香の頬が緩む。

「ワタシ、わかるよぅ。ここ、UFOよぅ」

「ええ?」

「アイノウヒョ、ここ、UFOよぅ。来ることある」

「どういうこと? ねぇ、武井さん…」

「そうらしいですよ。ここは、UFOの中みたいです。」

「UFOってことは…」

頭の中に響いたあの声は…、異星人?
やだそんな… まさか… 
だけど、これまでの不思議な体験を思い返すと完全には否定できない…。
あれから、どれくらい時間が経ったのか。
地上は今、どうなっているのだろう。
シェルターにいた人たちは無事だろうか。
摩周も心配だ。摩周… 無事だろうか…
ああ、はやくシェルターへ戻らないと…。

「武井さん、シェルターへ戻りましょう!」

「いや、それが…」

「うん? 武井さん… どうしたの?」

武井は俯き、口ごもった。

「イメージ…、できないんです。」

「ええ?」

「シェルターが…、見えないんです。」

「それ、どういうこと?」

その時、百香はまだ理解できずにいた。
シェルターが既に、この世に存在していないということを…。 

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