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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第1章『−−彼女が人に何をした』
第1話『小さな魔物』
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回は少しばかり事情が違うらしい。

「はぁ……っ、やり辛い……」

 森に入り、徒歩で2時間。指定の墓場の前に辿り着き、その中心に佇む死徒──一見可愛らしい少女に見えるソレを、遠目に見つめていた。

 肩ほどまでの煤汚れた、しかし何処か艶やかさを残す白銀の髪。
 虚ろに森を映す、光の無い紅眼。
 恐らくは木の枝にでも引っ掛けたのだろう。所々が破れ、汚れた、若草色のドレス。

 −−そして、包帯によって半分を隠された顔に見える、死徒特有の崩れ傷。

 石にヒビが入ったかのようなその傷は、紛れもなく彼女を死徒と証明する印。

「……ぁ」

 少女は、ジークに視線を向けた。

「……!」

 同時に、剣に手を掛ける。襲ってくれば、何時でも切り捨てられる様に。
 相手が如何なる容姿をしていたとしても、人類に害を為す存在であるなら躊躇は無い。それが仕事だ、罪悪感すら抱く事は許されない。

「……」

 が。
 少女は、不思議そうに首を傾げるばかりで、一向にジークを襲う気配は無かった。
 それどころか、ゆっくりとした足取りで付近の井戸に歩いて行き、横の桶を手に取って水を汲もうとする。

 その動作はあまりに人間らしく、あまりに魔族らしくない。

「……えぇ……?」

 どういう事だろうか。
 魔族は−−いや、その中でいう死徒などの自我無き魔族は、目に入った生物をひたすら狙う習性がある。
 人を見つけた時はその働きは顕著であり、目に入った途端走って来るのが普通なのだ。

 警戒しつつも、近付く。
 これが死徒に新たな習性が加わった結果なのだとすれば、対策の為にもそれを知る必要がある。それは、これから先安定して魔族を打ち倒す為に必須の条件なのだ。

 例外を見逃してはならない。

 まずは、手を伸ばせば触れられる寸前まで近付く。これで襲ってきても十分に対処できる様警戒はしているし、油断もしていない。……が、相変わらず襲ってくる気配は無し。それどころか、突然近くに寄ってきたジークに困惑するように目を白黒させていた。

「……本当に魔族か?動きだけ見てると殆ど人間じゃないか……」

 戸惑い、頭を抱えて次のアクションを考える。ここまで警戒心も敵意もない相手だと本当に敵か迷いそうになる。こんな外見でも討伐隊を返り討ちにした程強いのだ、警戒を緩める事は出来ない。

 ──少女が、こちらを見ていた。

「……ぁ……ぇ……?」

 何かしら声を発しようとしたのか口を開くが、喉が既に崩れているのか、掠れた音しか出ない。が、その態度、その表情、その目から、彼女が何を思っているかなど容易に読み取れた。

 −−怯え。

 瞳は揺らぎ、肩は震え、警戒を露わにしている。先程までジークを
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