四十一話:離別
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ヴィヴィオは聖王の遺伝子から創り出されたクローン体。それ故に『ゆりかご』を動かすための燃料となる。
今回、スカリエッティ側が機動六課をわざわざ襲ったのはそれが理由であり、それ以外の理由はない。一人の少女を奪うためだけにこのような惨状を彼らは生み出したのだ。ただただ、理不尽という言葉を体現するように情け容赦なく。
「聖王の遺伝子を継ぐ者か……この子も逃れられぬ運命を背負っているのだな」
アインスはヴィヴィオの運命にかつての自分を重ね合わせて憐れむ様に呟く。古代ベルカの時代には既に闇の書であった彼女は聖王のことを知っている。もっとも、知っていると言うだけで会ったことがあるわけではないのだが。
聖王のゆりかごは自分と同じ破壊を振りまくだけのロストロギアだ。しかし、だからといってお互いにできることは何もなく自らの在り方を問い続けることしかできない。自分は優しい主に出会えたことで呪いの運命から解き放たれた。もし、ヴィヴィオにも呪いを解き放つ者が現れるとすれば、恐らくはあの諦めの悪い少女だろう。
「ふ……奪う側の私が心配するのもおかしな話か」
「リインフォースT様、後は私達に任せて陛下をドクターの下へ」
「ああ、そうさせてもらおう」
ディードに促されガジェットU型の上に乗りその場から去っていくアインス。去り際にチラリと火の海の囲まれるザフィーラ達を見る。三人とも生きてはいるだろうがすぐに動くことはできないダメージを負っている。特にザフィーラは魔法も使えぬというのにその身を盾として二人を最後まで守り抜いていた。
しばらくは目を覚まさないかもしれないが死んでいるという心配はなかった。何故なら彼女は夜天の書の管制人格、例えその機能の全てを失ったとしても守護騎士達のことは分かる。それだけ強い絆を持つ者達を傷つけたことに胸が苦しくなるが切嗣の隣に居る以上は仕方のないことだと割り切り目を背ける。
【アインス、そちらの状況はどうなっている?】
「無事に聖王の子を手に入れた。ただ……ザフィーラとシャマルと会った」
【……そうか。何度も言ったと思うけど降りたいならいつでも降りてもいいからね】
明らかに心配した様子の切嗣から通信が入り、少しだけ元気が出るアインス。一方の切嗣はそんな様子にやはりこんなことはやらせるべきではなかったと唇を噛む。
「大丈夫だ、全て覚悟の上だ。それに元は私も破壊と殺戮だけが取り柄だったからな」
【そういう言い方はしないでくれ。君は望んでやっていたわけじゃないだろう】
「お前も望んだわけではないだろう」
【僕はこういうことに慣れているからね】
画面の向こう側で精一杯の虚勢を張る切嗣に今度はアインスが困った顔をする。男という生き物はどうしてこう意地を張って弱い自分を押し隠そう
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