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八神家の養父切嗣
四十一話:離別
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偽りは感じられず、そこまで付き合いの長くないアリアにさえ真実だと悟らせた。特に人間としての幸せはヴォルケンリッター達も同様に願っていた願望であるために素直に羨ましいとさえ思えた。最もその内容を聞けば全員が顔をしかめることになるだろうが。

「それで……どうしてあなたは自由なのにこっち側に居ないのかしら?」
「どちらに居ようともそれこそ自由だろう」
「あなたはあの子の騎士でしょう!? はやてを守るのが使命でしょ! もし脅されているのなら助けを求めなさいよ!」

 ここで初めてアリアがアインスの立ち位置について言及するがアインスは真顔で答えるだけである。その態度に思わずまたお前はあの子を苦しめるのかとアリアは叫び声を上げる。自分達がそんなことを言う資格がないのは分かっている。しかしながら、それでも言いたかった。はやての為に帰って来いと。

「……一つ勘違いしているぞ。私はあくまでも切嗣と共にいるだけでスカリエッティ側というわけではない」
「そちらの事情は分からないが……救われた恩義でも返そうとしているのか?」
「いいや、そもそも切嗣は私を主の下に返そうとしていた。これは私の願いだ」

 ザフィーラの問いに答えたのを最後に話は終わりだとばかりにアインスは銃を構える。以前の仲間を完全に敵としてみなしているのだ。かつて自らの全てを奉げて守ったものだと言うのに躊躇うことなく銃口を向ける。その強い覚悟に三人は戸惑ってしまう。家族であるシャマルやザフィーラだけでなくアリアも本気で敵対する気力が出てこないのだ。殺してでも敵を排除するというその闘争心が。

「一体……何があなたをそこまで駆り立てるの……リインフォース」
「お前達も知っているものだ。主はやてから与えられ、心に根付いた感情だ……」

 アインスが戦闘態勢に入ったことで黙って様子を見ていたオットーとディードも殲滅モードに入る。こうなった以上もはや六課に勝ち目はない。それでも納得がいかずにシャマルはアインスに声をかける。一体何を信念として戦うのかと。

「己ですら間違いと断じる破滅の道を歩く男。救うことが出来ないのならせめて……隣に居たい」
「あなた……まさか…!」
「せめて私だけは一人の女として地獄までついて行ってやりたい……それだけだ」

 未だに慣れない感触のする銃を握りしめ立ち向かってくるアインスを見ながら三人は悟る。彼女の行動の原動力となっている感情は最も単純で複雑なもの。破壊と殺戮だけの人生の中では決して手に入らなかった尊いもの。人間が人間である所以、生命の奇跡。そう、彼女が心に抱いている感情は―――愛だ。





 燃え上がる業火が夜空をまるで朝焼けのように赤く染め上げる。その下を銀色の髪の女性が金色の髪をした少女を抱きかかえて歩いている。少女、
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