第二十六話 アントワッペン始末
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ある別室の事で、地球の書物をマクシミリアンが翻訳した書物が無数置かれている。
誰でも閲覧できるという訳ではなく、家臣団の一員である事が絶対条件で二重三重もの『ディテクトマジック』が掛けられた通路を通らなければならなく、しかも、持ち出し禁止で、禁書を持ち出そうものなら『ディテクトマジック』の魔法が作動し、サイレンが鳴って衛兵が駆けつける仕掛けになっていて、最悪の場合、通路が崩れ落ちる仕掛けにもなっている。
そして、一度でも禁書室に足を踏み入れた者が、他国に走ったりすれば漏れなく暗殺という惨めな末路が待っている。
「それにしても、カール・フォン・クラウゼヴィッツというゲルマニア人は聞いた事がないですが、会う機会がありましたら、是非ご一報を……」
「何日でも語り合いたいですね」
ジェミニ兄弟が読んでいたのは、クラウゼヴィッツ著の『戦争論』のようだ。
「……ははは」
マクシミリアンは乾いた笑いを浮かべた。
「他に誰か禁書室に居るのか?」
『はい、例のごとく、ミスタ・ラザールです』
と、見事にハモり、『失礼します』と一礼して去っていった。
「……またか」
「おにーさま、お勉強しないの?」
「ああ、ごめん、行こうか」
「うん!」
アンリエッタの手を引いて簡単な読み書きの出来る幼児向けの区画へ向かった。
(それにしても、よく身体がもつ物だ)
アントワッペンの一件でもう一人家臣団入りした者が件の男ラザールで、平民出身だがあらゆる分野に精通する、万能の天才だった。
発明家でもあるラザールに蒸気機関の研究をして貰おうと思ったものの、ここ1週間、禁書室に篭もって、様々な書物を読み漁っていた。
身の回りの世話を殆ど省みないで読書に没頭していた為、せっかく登用したのに餓死されたら困ると、お付のメイドを一人置いて身の回りの世話をさせていた。
(ともあれ、仕事に取り掛かるまで、もう少し様子を見よう。天才と○○は紙一重っていうからね、束縛せずに好きにやらせていれば、面白い結果を生むかもしれない)
後にマクシミリアンの予想は的中する事になる。
アンリエッタに勉強を教えるわけになったのだが、勉強以上にアンリエッタに『王族たる者、進んで義務と責任を引き受けなければならない』と、マクシミリアンはフン族のアッティラ王の訓戒を少し改造した物を教えようと思っていた。
(国民の模範になるように、王族には貴族以上の責任が課せられる事を、アンリエッタにもしっかりと教えないとね)
☆ ☆ ☆
アントワッペンの一件で、判明した二つの能力の一つ
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