第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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のでしょうが、それを現界させられないと言う事は、奴を封じている封印や、反魂封じの呪は未だ完全に破られた訳ではない、と言う事だと考えられる。
犬神使いの青年を殺させず、封印に成功した事が影響している、と考えても良いでしょう。
矢張り、かなりの深手を負っても尚、封印に拘ったのは間違いではなかった。そう考えながら、アラハバキの首の経過を観察する俺。鳴弦が貫いた場所からどくどくと流れ出る呪力。それは普通の生命体が、傷口から血液を噴き出す様に良く似ていた。
しかし――
しかし、俺の見ている目の前で其処に集まる巨大な呪力。周囲に撒き散らされた呪力を集め、更に異世界から供給される呪力により、鳴弦が貫いた個所から漏れ出ていた呪力を簡単に塞いで仕舞う。
もし、目が見えていたのなら、まるで映像を逆回しにした時のように回復して行く様をまざまざと見せ付けられた事でしょう。
但し……。現実に首を少し横に振って陰気に染まりつつあった心を、もう一度奮い立たせる。
そう、それがどうした、と言う気分。確かに、これほどの回復力を目にするのが初めてならば、絶望に心を満たされたかも知れない。どうやれば、あれほどの回復力を有する相手を倒す事が出来るのかと。
しかし、何度も言う。それがどうした、だ。今まで俺が相対して来た敵に、このレベルの回復力を持たなかった奴はいない。これは神と呼ばれる連中からすれば標準装備の能力に過ぎない。これだけで、あの赤い巨大な影を大きな脅威と取る必要はない。
「天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて、天降し依さし奉りき此く依さし奉りし四方の国中と――」
今の回復する様を見鬼で視る事が出来たのは大きい。何故ならば、これで相手の弱点が見えたような気がしたから。
アラハバキは未だこの世界に完全に定着した訳ではない。この世界の地脈から、大気から、自然から気を吸い上げて自らの糧へとしている訳ではなく、未だ奴の潜んで居た異界より供給される呪力に多くを頼っている状態。
大祓いの祝詞で異界との接点と成って居る次元孔を封じて仕舞えば、あの驚異的な回復力を封じる事が出来、後は残滓を倒せば終わる。
罪、穢れの一切を祓う祝詞。少なくとも、この祝詞にも日本の歴史と言う強い存在の力がある。
アラハバキが信仰を失ってから久しい日本の現代社会であるならば、この十二月の末日に唱えられて来た祝詞が絶大な効果を発揮する事でしょう。
そう考えた刹那――
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