第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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抜くイメージ。
先ほど実行した時よりもスムーズに引き抜ける右腕。流石に短時間での再試行と、片手とは言え導印を結べるのは大きい。
弓月さんは……。背後、少し離れた場所に居る。どうやら、何等かの術を行使する為に俺の造り出した霊的な砦から離れたらしい。
流石に彼女の許しが出ない限り振り返るのは無理。ならば――
素早く導印を結び、口訣を唱える俺。有希と万結の元に残して来た飛霊の数は二。少なくとも後二体は呼び出せる。
上空からは激しい戦闘の気配が伝わって来ていた。俺の感知能力が捉えた戦況は、七体のさつきがその速度を武器に、数の上では有利な相手に一撃離脱を繰り返している。
さつきの能力。平将門の鉄身――刀も槍も通じなかったと言う伝説を利用した精霊の護りの強化と、俺が渡した如意宝珠製の黒のコートの防御能力だけが頼りの状態。おそらく、現代の科学的な攻撃ならば鉄身を貫く事は不可能でしょう。その上に仙人が造り出した宝貝の如意宝珠。それも、他者を護る時に最大の能力を発揮出来る『護』の文字が浮かぶ如意宝珠製のコートを貫ける攻撃は生半可な威力では難しい。
但し、相手は堕ちたとは言っても神。それも、おそらく主神クラス。更に、多頭龍の場合、その霊格は首の多さで決まる。眼が見えないので確かな事は言えないが、それでも、この地に顕われた龍の首は分身したさつきの数よりは多いように感じているので……。
自分が最前線で戦えない事がこれだけもどかしさを大きくさせる物なのか。
俺の周りの人間が、戦場に立つ俺を見てどう感じているのか。その事を改めて思い知らされたようで、少し反省する。但し、飽くまでも少しだ。
そう考えながら、その場に現われた二人の俺に軽く首肯いて見せる。こいつ等は俺自身。つまり、これから先に何をすれば良いのかは分かって居ると言う事。
こいつ等にわざわざ指示などする必要はない。
その首肯きを合図に、それぞれが、先ほど俺が行使した移動用の術式でこの場から消える飛霊。但し、あいつらも今の俺と同じ状況。木製で急ごしらえの腕と、視力は失われた状態。これでは牽制ぐらいの役にしか立たないでしょう。
最後は――
少しの決意と共に、自らの髪の毛を強く引き抜こうとした俺。用意してあった剪紙鬼兵符は上着と共に焼失。仕方がないので、伝承に従いより高度な方法での大量に投入出来る兵士の作成を考えたのですが、その時――
ガチャガチャガチャガチャ……。
金属と金属がこすれ合うような異様な音……まるで鎧を着込んだ武者たちが複数其処に佇んで居るような、そんな不穏な雰囲気を感じる。しかし、それは何故か聞き覚えのある物音。そして雰囲気に相応しい、巨大な、悪意のある陰の気配。
更に、弓月さんを取り囲むような
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