第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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ていない、と言うのに。
現実の目で確認する事は未だ出来ない。見鬼で感じる巨大な瘴気の狭間……上空に感じて居る巨大な炎の気は七つ。おそらく、そのすべてがさつき本人。
俺や弓月さんが後方へと退避、防御用の拠点を構築している間に、さつきは自らの戦闘の準備を整えた。そう言う事なのでしょうが……。
そう、あの貪狼、巨門……と言う呪文は、彼女が分身を作り出す時に使用する呪文。おそらく、平将門に六人の影武者が存在していた、と言う伝説に繋がる術だと思う。その本体も含め七人それぞれが独自に攻撃、術の行使も出来ると言う強力な術だったと記憶している。
但し、確かこの術には俺の飛霊と同じ弱点も持って居たと思う。
曰く、分身が受けたダメージすべてが本体の方にフィードバックされて仕舞う、と言う弱点。つまり、分身の一体が右腕を失い、更に別の分身が左脚を負傷したとすると、本体の方は右腕を失い、同時に左脚を負傷して仕舞うと言うかなりのリスクを伴う術。
あの時。前世でモンマルトルの丘が崩壊した夜に、確か妖精女王は居なかった……と記憶している。その時、……タバサが術を編むまでの時間を稼ぐ為にあいつが使用した術――
本来、あり得ない記憶。現実の俺が経験した経緯とは明らかに起きた時期と、関わった人員が違う赤い風車の事件。妄想の類と決めつけたとしても何の不思議もない内容なのですが、その時の崇拝される者ブリギッドが使用した術が、先ほどさつきが使用した術とまったく同じ術であった。
一瞬、何故か躊躇いの気を発する弓月さん。ただ、良く分からない間の後、
「すみません、武神さん。少し、向こうを向いていてくれませんか?」
そう話し掛けて来る。ただ、この言葉も意味不明。まるで昔話の中の見るなのタブーのような願いなのですが。ただ、そもそも現状の俺が視力を失っている事を彼女は知っているはずなのに……。それに、良く考えると、先ほどは確かに忍さんと話し掛けて来たのに、今は元の武神さんに戻って居る。
おそらく、先ほどは彼女がそれだけ失調状態であったと言う事なのでしょうが……。
偽名とは言え、異性から名前を呼ばれると言う事に、多少面映ゆいながらも、悪い気はしなかった。故に、今の気分は――
但し、これは自分が蒔いた種。弓月さんが求めている俺は、今の俺ではないかつての彼女を知って居た俺。何時かは思い出すかも知れませんが、今の俺には名前で呼ばれる資格はない。
少し苦い思いを噛みしめながらも、後ろを向き、右腕を木に当てる俺。この時間を無駄には出来ない。
「我、木行を以て――」
精神を集中。更に、再生された左手で導印を結ぶ事により術の完成度を高める。現在の体勢は膝立ち。故に、左腕を再生した時よりも身体の安定度は上。イメージは水に浸けた腕を引き
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