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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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態は間違いなく邪神の降臨。これは普通の人間の精神では絶対に正常な状態を保つ事が出来なくなる事は経験上、確認済み。流石に、その瞬間……この世界に奴が顕われる瞬間を、彼女の瞳に直接焼き付けさせる訳には行かない。
 人の心音。それに、体温は心を落ち着かせる作用がある。更に、彼女の体温や生命の鼓動は、俺に強い覚悟をもたらせる物ともなる。
 自分がここに存在している事を自覚し、未だ自分が立ち上がる事が出来る事を再確認する為に。失ってはならない物を……今ここで俺が倒れて仕舞ったら、俺の後ろには誰も居ないと言う現実を強く理解し、自らの覚悟を完了させる為に必要な存在として。
 耳に痛いほど高まっていた心音が、少しずつ納まって行く。同時に、人間としてなら正常な感覚と言える、異界の存在に対する畏れから発生する肌が粟立つような感覚も、それ以上に恐れを抱いている彼女に対する責任から薄れて行った。
 大丈夫、俺は未だやれる。未だ膝を屈する訳には行かない!

 次に仙術を発動。背後の樹木の枝を槍に変化させ、周囲に放つ!

 一瞬の内に、次々に大地に突き立つ槍。但し、これは攻撃を意図した物ではない。その槍に対して、俺の生成した龍気を注いで行く。形は五芒星と、それを囲む円の形に。

 そして、その大地に尽き立てられた槍を触媒として、

「我、世の理を知りて地に砦を描く!」

 俺と弓月さんを中心とした半径三メートルの陣――霊的な砦を構築。
 最後に、飛び道具。これは当然、魔法による攻撃も同時に防ぐ防矢陣で砦を覆い――

 既に俺の処理能力の限界が近い。……が、しかし、そんな事を言っていられる状況でもない。ここから更に次なる事態に対処する。急造の砦の霊的な防御力をこれ以上、向上させてもあまり意味はない。ならば――

 そう考えた時、何かが起きた。
 それは――――
 それは凄まじい爆発――だったのかも知れない。
 それは天地を貫く雷――だったのかも知れない。
 それは耳を(つんざ)く轟音――だったのかも知れない。

 今、この瞬間に起きた出来事を完全に五感で確認する事は出来なかった。おそらく俺を含む、その場に居る誰にも。それは現実に存在するありとあらゆる感覚であり、そしてまた同時に存在しない感覚でもあったのだ。
 そう、おそらくソレは五感を超越した感覚。魔法と言う、現実とは少し違う世界に生きる俺に取っても未知の感覚であった事は間違いない。

 世界の破壊と創造。それを一瞬の内に何度も経験させられた気分。それまで氷空を覆って居た闇が一瞬の内に押し流され、しかし、結果としてそれが清浄な気をもたらせる訳でもなく、ただそれまで以上に穢され、腐敗させられて行く。
 そう言う、危機感が更に募っただけ。
 そう、その場に顕われて居たのは――

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