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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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一瞬の出来事。直ぐに自らの足のある方向に体重を感じ……。
 この時、本当に生来の能力を発動。二人の体勢を崩さないように軟着陸を試みる。

 同時に周囲の危険の有無のサーチ。陰陽の気を見鬼の才にて見定める術の行使。罠や何モノかの待ち伏せなどの有無はこれでかなり分かるはず。
 そして、しっかりとした大地の感触を足と膝に感じた瞬間には、既に周辺の危険度の調査は終了していた。

「弓月さん、周囲の状況は?」

 陰陽の気に危険な兆候は感じられず。周囲に存在するのは背後に移動を行うのに使用した樹木。足元には冬枯れの……。しかし、その中には春に芽吹く為の新しい命を宿した芝生。そして無機質な石や土の気配以外存在せず。

「先ほどの場所から五十メートルほどの距離――」

 樹木から樹木へと瞬間移動を行うと言う、木行に属するかなり特殊な移動用の術式を予告もなく体験させられた弓月さん。しかし、それでも失調状態に陥る事などなく、現状の認識を行おうとした。
 有希や万結が持つ精神の安定に近い物を彼女……弓月桜からも感じる。これは、それだけ彼女が優秀な術者であると言う事の証だと思う。
 精神の安定を欠けば、其処に隙が生じる。術を行使する人間は、常に自分が安定した状態で術を使用出来る精神状態を維持しなければならない。簡単に狼狽えたり、激高したりする人間では安定した術の行使など出来る訳がないから。
 正にそう考えた瞬間。

 世界を軋ませる轟音が鳴り響く。
 大地の奥深くから、何か致命的な物が砕けたような叫び。それに続き、上空へと立ち昇る赤い光輝(ひかり)。但し、未だ俺の視力は回復していない。つまり、この光は見鬼の才が捉えた神霊的な光輝と言う事。
 そして――

 突如、世界自体が身震いした。

 傲然たる響き。古の城が築かれた山がすべて崩れ去るかと思われるほどの地鳴り。
 大地自体が、まるで時化(しけ)の海に漕ぎ出した小舟の如き様相を呈し始める。いや、それは現実に大地が揺れている訳ではない……と思う。ただ、精神に強く働き掛ける眩暈のような物を感じ、それがすべての生命体の平衡感覚を狂わしている、そう言う事。
 まるで酷い乗り物酔い。既に真っ直ぐに座る事さえ難しく――
 ええい、このままでは準備が追い付かない!

「我、木行を以て槍と為す、突き立て!」
「え?」

 時間が足りない!
 現状の確認の前に防備を高める事を優先。先ず、生来の能力を発揮。右側にいる弓月さんを自らの腕の内側に引き寄せ、二人の身体のバランスの確保と、弓月さんの精神の安定を優先させる。
 その際に彼女が発した驚きや、その他をない交ぜにした感情は無視。彼女なら直ぐに状況を理解してくれる。
 彼女にどれほどの実戦経験があるのか不明。しかし、次に起きる事
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