第6章 流されて異界
第140話 蛇神顕現
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りも続いている。
ぞわぞわとした何かが大きく立ち上がり――
「それでは皆さん、後の事はお任せしました」
「貪狼・巨門・禄存……」
非常に無責任な言葉を残し、消える強い闇の気配。この時、俺たちの傍らに存在したひとつの脅威が消え去り、それ以上の新たな危機が発生する。そして、ヤツの言葉に重なるさつきの声。
……と言うか、もう色々とヤバい!
「弓月さん!」
俺の右側に立つ少女に強く呼び掛ける俺。同時に未だ再生出来ていない右腕を彼女の居る……と感じられる場所へと伸ばす。
「はい、この腕を樹木に押し当てれば良いのですね?」
伸ばした右腕を掴み、そのまま目の前にある樹木へと押し当ててくれる弓月さん。俺の体勢は樹木に右腕を当てた状態での膝立ち。視力が回復しない以上、身体の安定を考えるのなら、この体勢が一番でしょう。
しかし――
「そのまま右腕をしっかり掴んではなさないでくれ!」
我、木行を以て――
本来の声を掛けた目的とは違う。が、しかし、それでも彼女が俺の身体に触れていて、更に俺自身が大木に触れているのなら問題はない!
「――場所を移動せん。運べ!」
怖かったら目を瞑っていろ!
かなり強い命令口調で叫ぶ俺。今はそんな細かい事に気を回す余裕などない。
そう、普段はこのような七面倒臭い術など使用せずとも、素直にシルフの瞬間移動を行使するタイミング。しかし、視力を失っている今、有視界に移動する術の行使自体が危険。
イメージ。俺の仙術の行使の際に重要なのは、如何に精確にイメージが出来るかどうか。
同時に目的の樹木を探す術も行使。危険なのは背後――虚無を湛えていた池。おそらくあの場所が、蛇神アラハバキが現界して来る場所。そちらの方向に近付くのは非常に危険と考えられる。
ならば――
顕われる相手の能力が不明である以上、確実に安全だと言える距離など分かる訳はない。まして、ここに辿り着くまでに準備して置いた防御用の陣が機能するかも、今となっては微妙。
あの這い寄る混沌がここに現われた以上、こちらの小細工など既に無効化している……ぐらいなら未だマシで、其処に罠を仕掛けて待ち構えている可能性も否定出来ない。流石にそのような危険な場所に対して瞬間移動を使って跳び込む訳には行かないでしょう。
重力を操る、と言う生来の能力を発動させた時と同じ宙に浮く感覚の後、前方に無限に落ちて行く感覚が続く。平衡感覚が揺らぎ、自らが上と思って居る方向が確実に上なのか。前だと思って居る方向が、実は下……重力が作用している方向なのではないか、と不安になる時間を体験。
無限に続くかと思われた落下の時間。しかし、それも実は
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