第二十五話 断罪の剣
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「……月の光が」
「すごい……綺麗」
魔法こそ、ただの『ブレイド』だったが、闇夜を照らすその光は、反乱による破壊によって明日への不安を持っていた住人にとって、大変心強い、希望の光に思えた。
一方、ド・フランドール伯たちにとって、その光は断罪の光だった。
恐慌状態に陥ったブリッグ艦の船員達は、ある者は神に許しを請い、またある者は空中を航行しているにもかかわらずフネから飛び降りた。
ド・フランドール伯には、ゆっくりした時間に思えた。
光の柱がゆっくりと確実に自分に倒れ掛かってくるのだ、ド・フランドール伯も船員たちに習って逃げ出したかったが、狂っても僅かに残っていた貴族の誇りがそれを許さなかった。
「来るならこい!」
ド・フランドール伯は『エア・シールド』で迎え撃ったが無意味な行動であった。
光の柱は艦尾に立ったド・フランドール伯ごとブリッグ艦を両断した。
艦首から艦尾へ綺麗に斬られたブリッグ艦。
中に居たフランシーヌは、丁度縄を切って自由になったばかりだった。
通路に出ようとした所に、ガクンと船体が揺れて思わず倒れそうになりながらも、何とか外に出ると通路が無かった。
正確には、通路部分は光の柱によってブリッグ艦が斬られた際に消滅していた。
それを知らないフランシーヌは勢い良く通路側に飛び出したものの、当然、通路側は無く、空中に飛び出した形になった。
「ええええっ!?」
真っ二つにされたブリッグ艦はバラバラになって落下し、フランシーヌも混じって落ちていった。
落ちてゆく時間が妙にゆっくりと感じながら、海の方向を見ると水の玉が数個見えた。
水の玉……ウォーター・ボールは、フランシーヌの落下コースを読んで待機していたのだ。
一つ目のウォーター・ボールが、フランシーヌにあたると破裂音と共に弾け、フランシーヌの落下速度を緩めた。
そして、二つ三つ四つ五つ六つと、連続で弾けた為、落下速度は人が死ぬような速度ではなくなり、七つ八つで怪我も無くフランシーヌは海に着水した。
その後、フランシーヌは海に浮かぶブリッグ艦の残骸によじ登り辺りを見渡した。
バラバラになったフネの残骸と海に叩きつけられた船員の遺体が浮かんでいるのを見て、兄は死んだ事を直感した。
厚い雲に隠れていたはずの双月が雲の隙間から見え、降り注ぐ月光の美しさにフランシーヌは知らず知らずのうちに涙を零した。
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