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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
1.プロローグ
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いのですが、先ほど申しました状況の変化で、メインの取引相手をEUにすると決めたもので、その余裕が当社にはないのです。」
「そ、そんな…。」
「私個人としましては、御社の潜在的な技術開発力は非常に魅力的なのですが、企業の方針は先ほどの会議で決定してしまいました。大変申し訳ありませんが……。」
その後、しばらく担当との会話が続いたが、惣一郎の耳には入らなかった。起死回生の、最後の希望だったノースロックとの交渉が失敗した惣一郎は抜け殻のように執務室の椅子で項垂れた。

数日後、精神的なショックから立ち直った惣一郎であったが、未だに今後の希望を見出せずにいた。最近はBETA戦争の状況も民間にそれなりに降りるようになってきている。ニュースでは希望あふれることだけを誇張しているが、過去の大戦でそうであったように、それは情報統制下でのものであり、少し考えれば状況は圧倒的に不利であることは分かる。それは今後戦術機の需要は更に増すこと意味し、遠田技研の衰退も意味していた。

現状は何とか戦術機開発の一部を担っているが、三社からすれば余裕ができれば主機開発から全て自社で行いたいと考えるのが普通であり、それは遠くない未来起こりそうなことであった。そうなれば遠田技研は終わりである。遠田の開発している戦術機パーツは最終的には三社メーカーの元に送られるのに対して、遠田は戦術機の情報を得ることが出来ない。これ以上技術力に差をつけられるともう巻き返しは無理だろう。

悩み抜いた惣一郎は一つの計画を考えだした。それは追いつめられた惣一郎の狂気が生んだ、僅かな、ゼロにも等しい希望だった。

戦術機の開発は難しい。だが戦術機とはそれ単体では運用できない。動かす衛士が必要であり、戦術機の能力は、戦術機の性能と衛士の能力によって決まる。ならば最高の衛士を生み出し、その蓄積された経験をもとに戦術機を開発する。今は技術蓄積に努め、同時に究極の衛士を育成する。

戦術機を開発して衛士を乗せるのではなく、衛士を生み出した上でそれにあった機体を作るのである。

どう考えても狂った発想だったが、追い詰められた惣一郎はその逆転の発想にすべてを託すことを決めた。その名もSES(スーパーソルジャー)計画。
そしてその対象に選ばれたのは惣一郎の息子。当時三歳になった遠田巧であった。

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