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戦国異伝
第二百五十二話 壇ノ浦へその三

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「既に潮の流れは把握しております」
「陸で言った通りじゃな」
「ですから」
「わかった、ではな」 
 そう聞いてだ、信長はあらためて言った。
「ぐるりと囲め、そしてじゃ」
「そのうえでですな」
「鉄甲船の大筒で撃て」 
 魔界衆の軍勢をというのだ。
「よいな」
「わかりました、では」
「そして他の船もじゃ」 
 無論鉄甲船以外の船もある、相当な数の船が何十隻とある鉄甲船と共にある。
「魔界衆の軍勢を囲みな」
「そしてですな」
「鉄砲で撃て」
 魔界衆の者達をというのだ。
「潮の流れに合わせてな」
「そうしますな」
「うむ、そうして攻めてじゃ」
「そのうえで」
「近寄って来た敵も撃ち」
 信長はさらに言った。
「そのうえでな」
「さらにですか」
「包絡も使え」
 それもというのだ。
「よいな」
「それで、ですな」
 九鬼と共に船にいる村上が応えた。
「魔界衆の者の船を焼くのですな」
「そうじゃ、船を焼いてな」
「近寄せぬ」
「そうせよ、御主達の戦を使え」
「わかりました」
 村上も信長の言葉に頷いた、そうして。
 まずはだ、信長は軍勢を動かした。それはかなり迅速であった。
 魔界衆が動くよりも速く彼等を鶴翼で覆ってだ、そのうえで。
 信長の言う通り鉄甲船を中心としてだった、魔界衆の軍勢を囲んだ。石川は彼等の動きの速さを見て驚いて言った。
「何と、これは」
「はい、恐ろしい速さです」
「瞬く間にです」
「我等を囲んでしまいました」
「完全に」
「これはな」
 まさにと言うのだった。
「この海の潮が完全にわかっているわ」
「ですな、まさか既にですか」
「この壇ノ浦の潮の流れを把握しておるのですか」
「この辺りは潮の流れが複雑ですが」
「戦の前にですか」
「既に」
「くっ、しかしな」
 それでもと言う石川だった、その巨大な煙管を手にしたうえで。
「まだこれからじゃ」
「はい、これよりですな」
「その時が来れば」
「我等の切り札を出す」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 まさにという言葉だった。
「そうするからな」
「はい、では」
「それまで待ちましょう」
「そして棟梁もですな」
「やがては」
「わしも出す」
 石川自身もというのだった。
「忍術の極意をな」
「百地様、楯岡様、音羽様と共に」
「そうされますな」
「そうじゃ、必ずじゃ」
 間違いなくという言葉だった。
「それで勝つぞ」
「ではその時を待ちましょう」
「まずは」
 囲まれてもだった、彼等は諦めていなかった。それは老人も同じで。
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