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真田十勇士
巻ノ三十八 双槍その六

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「明日も励みましょうぞ」
「うむ、癒しもまた必要」
 筧も言う。
「風呂もまた」
「風呂は匂いも垢も落とす」
 海野はこのことを言った。
「だからよい」
「全くじゃな、わしも風呂は大好きじゃ」
 猿飛も笑顔である。
「生き返るわ」
「風呂に入ると」
 根津も満足している。
「落ち着くわ」
「そうじゃな、しかもこうした風呂は」
 最後に言ったのは霧隠だった。
「最高の馳走じゃ」
「皆満足しておるな」
 幸村はその彼等の言葉を聞いて微笑んだ。
「それは何よりじゃ」
「はい、この通りです」
 笑顔での返事だった。
「満足しております」
「いい湯ですな」
「心も身体も洗われ」
「実に落ち着きます」
「うむ、ここで英気を養われ」
 兼続も言う。
「明日も励まれよ」
「鍛錬にですな」
「それに」
「はい、是非」
ではそれがしも」
 幸村も湯の中で言う。
「そうさせて頂きます」
「源四郎殿もですな」
「是非共」
 こう答えるのだった。
「そうさせて頂きます」
「それは何より、では槍もですな」
「はい、無論そちらもです」
「励まれますな」
「そうさせて頂きます」
「それで馬と水ですが」
 馬術と水練はというと。
「されていますか」
「はい、その二つも」
 すぐに答えた幸村だった。
「励んでいます」
「それは何よりですな」
「この二つはどうしてもです」
「槍以上にですな」
「そうしています」
 これが幸村の返答だった。
「その二つが万全でなければ」
「どうしようもありませぬな」
「上田は山に囲まれていますが」
 信濃のその中にだ。
「しかし馬に万全に乗れなければ」
「何も出来ませぬな」
「攻めるにしても去るにしても」
 どちらでもというのだ。
「馬が必要で、そして」
「水練もですな」
「そちらもです」
 馬術と同じく、というのだ。
「必要なので」
「それで、ですな」
「どちらも励んでいます」
「特に逃げる時は」
 兼続は幸村に確かな顔で述べた。
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