巻ノ三十八 双槍その三
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「ですから」
「体力もですか」
「おありですか」
「左様です」
こう話すのだった。
「だから今も息切れ一つしておられませぬ」
「それもまた見事」
「素晴らしい方ですな」
「今は我等の最後佐助との勝負ですが」
「その跡は」
「はい、次はです」
また言う従者だった。
「源四郎殿とですな」
「殿はです」
「我等以上の武芸の持ち主」
「その殿ならば」
「直江殿にも」
十勇士達は目を輝かせて言った。
「必ずそうなります」
「互角にです」
「勝負されますぞ」
「そうですな、貴方達の主ならば」
従者は十勇士達、兼続に遅れを取りながらも勝負を最後まで果たしたその彼等の力量を見てから言った。
「出来るでしょう」
「直江殿とも互角に」
「戦えますな」
「そうなりましょう」
こう言うのだった、そして。
佐助と兼続の勝負が終わりだ、そうしてだった。
幸村が立ち上がってだ、兼続に言った。
「では」
「はい、これより」
兼続も応える。
「勝負をしましょうぞ」
「いえ、少しです」
「休憩をですか」
「されて欲しいのですが」
こう兼続に申し出るのだった。
「是非」
「それがしが疲れているから」
「だからです」
「そう言われますか」
「これまでです」
兼続はというのだ。
「それがしの家臣達と続けて稽古をしていました」
「それで疲れているから」
「お休み下さい」
「それがしが大丈夫と言えば」
「それでもです」
幸村は兼続に引かぬ声で返した。
「十人と稽古をしたのです」
「それがしがそう言っても」
「疲れていることは間違いありませぬ」
それ故にというのだ。
「お休み下さい」
「そのうえで稽古をせねばですか」
「戦なら敵が疲れている時にこそ攻めます」
「勝つ為に」
「しかし今は稽古です」
戦ではない、だからだというのだ。
「お休み下さい」
「わかりました、では休み」
「はい、その後で」
「お互い万全な状況で稽古をしましょう」
「それでは」
こうしてだった、兼続は幸村の言葉に従いそうして暫く休みだ、茶も飲み疲れを癒したそのうえでだった。
幸村との稽古をはじめた、それぞれ二本の槍と刀を使い。
体術を駆使して四つになりぶつかった、その稽古は。
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