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クリスマスに鮫
3部分:第三章

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第三章

 しかしなのだ。そのマリーはまだ彼女に言うのだった。
「お肌だって白くてきめ細かくて」
「お肌もなの」
「脚だってすらりとして奇麗じゃない。花枝凄くいいわよ」
「だといいけれど」
「自信持っていいから」
 そしてこう告げるのだった。
「充分にね。それじゃあ話はこれ位にして」
「泳ぐのね」
「ええ。準備運動も済んだしね」
 四人は既にそれは済ませているのだった。泳ぐ前の準備体操は絶対だった。
「じゃあ気合入れて泳ぎましょう」
「そうね。それにしても」
 ここでだった。花枝は優しい笑顔になった。そのうえで澄んだ、ブルーダイアをそのまま溶かした様なその海を見て言うのだった。
「こうしてクリスマスに」
「泳ぐのもいいものでしょ」
「最初はそんなの有り得ないって思ったけれど」
 それでも今はというのだった。
「今はね。もうね」
「そうでしょ。クリスマスに海で泳ぐのもいいものでしょ」
「ええ」
 その優しい笑顔でマリーの言葉に頷く。
「本当にね。そう思うわ」
「それじゃあね」
 健太郎とオスカーもいる。四人で今その美しい夏の海に入ろうとした。ところがだった。
 突如としてサイレンが鳴りだ。英語での放送が入った。
 その放送を聞いてだ。四人は瞬く間に顔を顰めさせて言うのだった。
「何だって!?鮫!?」
「鮫が出たから泳ぐなって!?」
「折角今から泳ごうと思ったのに」
「こんなことになるなんて」
 オーストラリアの海では鮫が多い。時々こうしたことがあるのだ。だがこの放送を聞いた四人はだ。瞬く間に不機嫌になって泳ぐのを諦めるしかなかった。
 それでだ。健太郎は皆があがっていき誰もいなくなった海を見ながら呟くのだった。
「クリスマスに鮫なんてな」
「これが一番予想外だったわ」
 花枝も言う。
「ちょっとね」
「そうだよ。折角泳ごうとしたのに」
「まあ気を取り直してさ」
「プール行かない?それじゃあ」
 その残念がる二人にだ。オスカーとマリーが声をかけてきた。
「近くのホテルにいいプールがあるんだ」
「そこ、誰でも無料で入られて気軽に泳げるしね」
「そこで泳いで」
「楽しもうっていうのね」
「うん、とても広いから楽に泳げるしね」
「それでどうかしら」
「そうだね。それじゃあね」
「そこで御願いね」
 気を取り直した日本人二人はオーストラリア人二人の提案に頷いてだった。それでそのプールに向かうのだった。真夏の中の汗をかいて泳ぐ楽しいクリスマス、それがオーストラリアのクリスマスである。


クリスマスに鮫   完


                2010・12・2

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