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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第229話 心の悲鳴
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母さんは、亡くなったお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの事を恥じてるんでしょ。……だって、由緒ある名家じゃなくて、ただの農家だったから。決して消せないルーツ……。どう努力しても、それだけは消せない。………それが不満なんでしょう?」
明日奈の冷めた言葉に、京子は、今日初めて、大きく表情が変わった。
玲奈の癇癪にはまるで変化が無かった筈なのだが、今回ばかりは違った。ただただ冷静に、明日奈に突かれた自分の中にある触れてはならない部分に触れられた。
眉間に険しい谷間が生まれ、怒髪天を衝く、とまではいかなくとも、怒りの表情に変わった事を見届けた後に、明日奈は扉を閉めた。
ダイニングルームでは、『直ぐに戻ってきなさい!』とだけ聞こえていたが、今日はもう戻る事は決してない。……だから、明日奈は泣き続ける玲奈を連れて、逃げる様に足早にホールを横切り、階段を駆け上がった。
玲奈の部屋の前に衝くと、その部屋の扉を開けて、少々大きめのベッドに座らせた。
「…………おねえちゃん」
座った所で、玲奈が明日奈に声をかけた。
まだ、すぐ隣でいてくれているから。
「ん?」
「……ごめん、なさい」
「どうして謝るの?」
「……だって、だって……わたし……っ」
玲奈の中の嵐は、徐々にさりつつある様で、母に対する考えは変わらず、そして認めたくはない事は代わりないものの、険悪な空気を作ってしまった事に対して、明日奈に謝ったのだ。
だけど、明日奈はただただ、微笑むだけだった。
心優しい玲奈だから、謝るだろうことは判っていた気がしたんだ。
「……感謝しかないよ。レイ。だって……レイが、初めて、だったんだよ? 母さんにぶつかったの。私は、理屈ばかりが出てきたり。何とか反論しようと考える事しか出来なかった。……でも、時には腹を割って話をする事も大切なんだって、レイに教わった。――レイの様に、素直な気持ちを伝える事は、出来ないかもしれないけど……、私も 認めてもらえる様に頑張るから」
「…………う、っ」
ゆっくりと、玲奈は明日奈の胸の中に顔を埋めた。
明日奈は再び、玲奈が落ち着くまで胸に抱き続けるのだった。
そして、暫くしての事。
玲奈が泣き疲れて、眠ったのを確認すると、明日奈は足音を殺しつつ、自室へと戻っていった。
自室に戻ると、そのまま身体をどさりとベッドに投げ出した。身嗜みを整える為に、着替えていた高価なブラウスが皺になるのもかまわずに大きなクッションに顔を埋めた。
――やっぱりだ。レイのほうがよっぽど強いよ。私なんかよりも……。
妹が代わりに想いの全てをぶつけてくれた。
玲奈がいなかったら、あの場で自分は何を言っていたか判らない。
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