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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第229話 心の悲鳴
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う。


――彼が信じ、そして 手掛けている企業は、信じられる。間違いなく立て直せる。……間違いなく復活する。だからこそ、投資する事を惜しまないし、迷わない。


 と思わせているのだ。

 その影響もあり、周囲の期待値通りに見事に立て直したのが 件の事件により、地の底まで失墜した《レクト》だった。

 確かに、レクトは大企業。巨大企業だ。だが、世界から見れば、東洋の小さな島国の一企業に過ぎないのだという事を思い知った瞬間だった。

 だけど、それらの畏怖の念とさえ思われかねない周囲の視線が、何よりも彼の親が恐れていた事なのではないか? と明日奈は同時に感じた。


 だからこそ、仕切りに彼は『普通に接してくれて嬉しい』と言葉を続けたのだろう。


 そして、恐らく……いや、間違いなく玲奈も感じているのは明確だった。




 明日奈自身の考え、そして 玲奈の、……彼の父親の、気持ちの代弁をしたかった。気持ちが通じ合った事を。

――あの朱い空の下での事を。 涙を流しながら改めて告白をした玲奈の、……2人の気持ちを。

 だけど、今は妹を支える余裕は自分自身には無かった。ある意味では自分自身も窮地に立たされているも同義なのだから。

「そんな事より、私のキャリアって……?」

 だから、明日奈は話を反らせ、且つ 訊いておかなければならない事実を問いただす事にしたのだ。

「お正月に本家で引き合わされたあの人はなんなの? ……何を吹き込んだか知らないけど、あの人、もう私と婚約でもしたような口ぶりだったわよ。わたしの生き方の選択肢を狭めているのは母さんじゃない」

 明日奈の脳裏に浮かんだ記憶。
 あの世界で、リズに言った嫌な記憶(・・・・)の源泉がそこだった。

「……結婚もキャリアの一部よ。物質的に不自由のある様な結婚をしてしまったら、5年、10年先に、必ず後悔するわ。あなたの言うやりたい事だって、できなくなっちゃうわよ。その点、裕也君なら申し分ないわ。派閥争いの絶えないメガバンクよりも一族経営の地銀のほうがずっと安定しているし」

 ここまで話た時、明日奈は玲奈の身体が一瞬震えたのを見た気がした。多分、同じ気持ちなのだという事も理解する事が出来た。

「………何も反省してないのね。あんな事件を起こして、わたしと、それにレイだってそう。……大勢の人達を苦しめて。そもそもレクトの経営を危うくしたのは、母さんが選んだ須郷伸之なのよ」
「やめてちょうだい」

 京子は盛大に顔をしかめて、煩い羽虫でも払うかのように、左手をぱたぱたと振った。

「あの人の話は聞きたくもないわ。……だいたい、あの人を気に入って養子にしようって言い出したのは、お父さんですよ。人を見る目がないの
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