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ソードアート・オンライン〜Another story〜
マザーズ・ロザリオ編
第229話 心の悲鳴
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思える筈もない。
「……おねぇ……ちゃん」
瞼を閉じている玲奈だったが、眠った訳ではなかった。
あのまま、優しい姉の胸の中でずっと過ごせば、眠られたかもしれない。でも、いままでも、そして これからも 姉に支え続けてもらう訳にはいかないから。その多少の自立心に似た感情が 少なからず玲奈に力を与えたのだ。ゆっくりと、ブラウスを脱ぎ、楽な姿でベッドに潜り込んだ。
『もう、大丈夫だから』
と言わんばかりに。そして、目を閉じたんだ。
姉の明日奈は、そんな自分の頬を一撫でしてくれた。……そして、1人になった。
1人になった事で――再び孤独感が玲奈の中で沸き起こる。
――何が、大丈夫なもんか。……私は、私も 強くなんか、ない。ひとりになったら、こうやって、泣いてしまうだけで……。
瞼を閉じているのだが、それでも止めどなく涙が溢れてしまう。
そして、馳せるのは 姉の事と……リュウキの事だった。
――……あの朱い空の下で、ずっと一緒にいてください。と言った。……抱きしめてくれた。
本当に嬉しかった。その笑顔に、いや 全ての表情に。《竜崎隼人》と言う人のすべてに救われたと言っていい。
――だけど……自分は彼に何をしてあげられる?
それは、玲奈の中に生まれた疑念だった。
ずっと、闇の中だった。だけど、昨日まではなかった、光を追いかけて、追いかけて、ゴールのない迷路だと思っていた場所から、抜ける事が出来た。
だからこそ、笑顔が戻った。何処か偽っていた素顔が表に出る様になった。
リュウキを長く、長く見てきた父親。綺堂が玲奈にそう話してくれた事は記憶に新しい。
でも、今は違う。
リュウキの回りには、本当に光だらけになっている。
肩を並べて、歩いている《キリト》の姿。
そのキリトの傍で、同じく笑顔を向けている姉の《アスナ》の姿。
綺堂が願った通りに。いつもいつも、笑顔で決して分け隔てなく話しかける《リズ》の姿。
まるで、妹が兄を慕う様に、笑顔を見せ、最大の信頼を向けているシリカ。
同じ。……心に同じ闇を持って。それを払ってくれた、守ってくれた隼人の事を……間違いなく好きになっている、愛している、とさえ思える 笑顔を見せるシノンの姿。
彼の、リュウキの後ろにはそういった笑顔が。……光が、彼を照らし続けてくれている。
――……でも、自分はどうなんだろう?
『オレは、嘘は言わない。……レイナは、オレの中の闇を払ってくれた光、だよ。――レイナが、一番だ』
そう、笑顔を見せてくれている。ほろ苦甘く、本当に心地よい。
だけど、その笑顔を曇らせかねないのが自分の今の境遇だった。
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