御使いのいる家 ぱ〜と3
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ったが、目覚めたテンプティが何よりも最初に感じたのは「生きている」というたったそれだけの――御使いとなってからは一度も感じたことがない感覚だった。
生きている。
自分は生きている。
ペテンでもない、幻でもない、確かにここにいる――。
生きる事の恐怖が嫌で逃げた末に、生きている事に感謝すら覚えることになるなど、エス・テランの人間たちは思いもしなかったろう。最終的に御使いとしてのテンプティは、目的地と全く違う「不完全な存在」という場所に辿り着いてしまったのだ。
今、テンプティは将来の事を考えていない。今まで将来は考える必要のない物だったが、今は考える余裕がないぐらいに必死に生きている。あらゆる楽しみが色を変えた世界で、有限な「人間」という存在に逆戻りしながら生きている。今を楽しむことに必死過ぎて未来が考えられないほどに――。
テンプティの隣では今、天竺光という少年が呑気にアイスを食べている。アドヴェントは彼が自分たち御使いをここに呼びこんだと言っているが、正直なところテンプティにはそれが真実かどうかわからない。ただ、そんな中でも分かっていることはあった。
ミツルは平凡な人間だ。喜怒哀楽全てを欠かさず、ドライな感情のなかにも優しさや温かさが見え隠れする、普通の人間だ。そしてこの人間は、よく御使いの間違いや欠点をズバズバ指摘する。その言葉を聞くたびに、改めて思い知らされるのだ。
――永遠でないからこそ、ペテンに出来ないからこそ、見えるものがある。
――その違いを自覚できることが怖くて、不安で。
――だからこそ、それを克服できた瞬間がどうしようもなく『楽しい』。
(成長するって『楽しい』なっ♪ミツルともっともっと一緒にいれば、もっと見えてくるのかなー?)
だとすれば、半端な次元力しか操れない今という環境も悪くない。
御使いとしての力を大幅に失い、永遠の存在ではなくなり、考えなくてよかった喜・怒・哀の感情が戻りつつあるとしても……。
「ミツル」
「何だ?」
「生きてるって、楽しいね?」
他人の姿を見て笑うより、自分から笑える『楽しみ』が、今はなによりも尊いから。
「………意味わかんね」
「あっ、照れてる〜!ね、ね、テンプティのスマイルどうだった?キュンときた?」
「照れてねぇ。断じて照れてねぇ!お前みたいなお胸が平野な女には全くときめかねぇッ!!」
「ならこれでどうかな〜?」
ミツルの手を掴んでアイスを落とさないようにしながら、彼の膝の上に向かい合う形で飛び乗る。本人は「照れてねぇ!!」と言い張っているが、彼はスキンシップには弱いのだ。
「ど、どけっ!ちょっと、アイス食えないし!!」
「いやー、ミツ
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