御使いのいる家 ぱ〜と3
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は次に試せばよかった。試行錯誤にも「取り返しのつかないこと」がないのだから、何一つとして焦りもなかった。
ただ、この宇宙の消滅を防ぐという点に置いてだけ、テンプティはドクトリンにひたすら協力した。無限の遊び場を約束するこの宇宙が無くなれば、テンプティの『楽しみ』は終わりを告げる。一億二千万年に一度の大災厄の回避を自分たちが乗り切りさえすれば、宇宙は勝手に増えていって遊び場は確保できる。
唯一そこだけが、テンプティにとってペテンに出来ない『真実』だった。
だから、その真実が崩壊した時、テンプティのペテンは砕け散った。
――まだわからないのか!宇宙の大崩壊を招く真のバアル……!
――それはお前たちなんだよ!!
――自分たちの事が何も分かっていないようだな……!
理屈は簡単だった。
『消滅しようとする力』に備えて御使いは砕け散ったソルの力を集結させ、その最中にシンカに到達する資格がない知的生命体――『存在しようとする力』を滅ぼしてきた。そして『消滅しようとする力』と『存在しようとする力』は本来均衡を保っている。ここに御使いの大きな思い違いがあった。
御使いは、選ばれし者ではない悪しき種を狩り尽くし、優良な存在を『真徒』として取り込んで災厄を乗り切ってしまえば宇宙は存続すると考えていた。だが、悪しき種の代表だった地球人からすれば、全く違った見え方をする。
『存在しようとする力』は『消滅しようとする力』を倒す事も出来る。事実、Z-BLUEたちは見事にあらゆる危機を乗り越えて見せた。そうなると地球人からすれば『既に1億2千万年に一度の災厄は退けている』ことになる。この時点で宇宙は存続する筈なのだ。
なのに、御使いはそこから更に『存在しようとする力』をひたすらに滅亡させようとする。つまり、存続する筈の未来を御使いが刈り取っている。この時点で、彼等から見ると『消滅しようとする力』と御使いの存在が完全に重なる。すなわち、御使いが真の『根源的災厄』になる瞬間がそこにあった。
1億2千年の時を経て、テンプティの目の前に越えた筈の現実が立ちはだかった。
自分の存在こそがこの宇宙にとって害悪で、余分で、存在する必要がない。
「恐怖や不安からの解脱」という免責の根底は余りにも脆く崩れ去った。
それからは流されるがままに濁流に飲み込まれる。
『王の力』によってペテンにした筈の『死』から逃れられていないことを思い知らされ、最期はひたすらに生を願って懇願するも聞き入れられず――そこで、テンプティという一つの意識は一度消滅した。
ほんの一瞬か、あるいは永遠にさえ思える消滅という名の静謐から目が覚めた時、御使いは絶対者としての力を喪って人間の部屋に転がっていた。混乱はあ
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