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御使いのいる家 ぱ〜と3
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きという理想に心が追い付いていないが故に、彼は自己矛盾に気付けませんでした。御使いは完全な存在になったと言いながらアドヴェントを追放し、都合のいい時だけ御使いという繋がりを持ち上げる……ある意味、彼が最も人間的な御使いだったのかもしれません」
「で、そんな悲惨な状態になって嫌気がさしたサクリファイ姉は政治的無関心に突入して責任放棄したと」
「だ、だってシンカの道を進む者たちと御使いの醜い争いを見るのが嫌だったんです……」
「真実を知っていて何もせずにシルバニアファミリーしてた残姉さんがある意味一番罪深いね」
「あああああーーーー……ッ!!」

 逃れ得ぬ真実に残姉さんの心がマキシマムブレイクしてしまったようだ。めっちゃゆっくり倒れていくので仕方なく着地点にクッションを挟んでおいた。やっぱこの人の周りだけ時間の流れが遅いような……これもエタニティ・フラットの応用なのか?面倒くさい人である。
 哀しみとは得てして自己陶酔的な部分がある。自分が不幸で孤独であることを理由づけることで行き場のない感情に正当性を与えることが出来るため、哀しい哀しいと言っていればどこまでも心が逃げ続ける。逆に言えばサクリファイ姉が最後に真実に辿り着けたのは、自分が間違っているという漠然とした意識から目を逸らす為に『哀しみ』に縋っていたのが理由なのかもしれない。

「ミツル、彼等も悪気がある訳じゃないんだ。御使いがこの地に再臨してまだ間もない……己の過ちを見つめ直すまでは加減してやってくれないか?」
「アドヴェント……ちょっと気になってたんだけど、『至高神Z』とか『超天死神光(ウルティウム・デウス・イニティウム)』とかって自分で名前付けたの?ヘリオースに比べて超絶ダサいんだけど」
「ぐはぁぁぁぁーーーーーーッ!!」

 アドヴェントさんが血を吐いて後ろ向きに倒れた。きっと計画段階で名前とか必殺技とかものすごく入念に妄想していたに違いないが、どうやら『喜び』の意識の集合体にはネーミングセンスが欠けていたようだ。
 『喜び』とは要するに自分が喜ぶように解釈できれば何でもいいわけで、言うならば超ポジティブな自己満足だ。ポジティブシンキングで周囲が何と言おうが自分は最終的に正しいと確信しているので、完全に論破されるまで自分の思想に何所までも盲信的になれる。

 と、一通り御使いの心を抉ったところでテンプティがふらっとリビングにやってきた。

「ミツル〜冷蔵庫のアイス食べていい〜〜……って何この死屍累々!?」
「気にしない気にしない。黒歴史という名の過去の罪と向かい合ってるだけだから。あ、それとアイス食べるなら俺の分も取ってくれよ。チョコナッツの奴」
「え、それはいいけどサ……放置なの?」
「これしきで立ち直れなくなるようなら人間社会で生きていけないよ〜」
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