87話 泉
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ら支えてくれている。……ちょっと踏み込んだだけで地面にひび割れを作れるぐらい重いからだよね。ありがとう、そしてやたら武器と防具を持っててごめん。本当にごめん。自力で移動は無理。というわけでククールが力尽きればべしゃっと地面とご対面。泉には落ちずに済んだけど……。
「……ここにいたら、頭痛いけど、……なんか、右目が見えるんだけど……」
「は?」
「生まれつき、見えないはず……ちょっと見てくれない……鏡が先でももちろん……」
「ちょっと見るぞ」
そう断られて右目の前の前髪が払われる。……ククールはわかりやすく、息を呑んだ。なになに、充血してるとか?左目と同じように紫になったんじゃなくてもっと気持ち悪い色になってたとか?エルトやヤンガス、ゼシカもこっちにやってきたけど……なんで何も言わないんだろう。見えてるとは思えないような感じ?それとも痛すぎて幻覚見てるだけでそんなことはなさそう?
「泉に映して見てみて、トウカ」
「自分で見ろって……?」
「見たらわかるかも」
エルトに言われた通り泉を覗き込む。きらきらした水はやっぱりとても綺麗で底まで見える透明で、その水面には明らかに体調最悪な私がいる。前髪をおさえてじっくり見ようと乗り出して目を凝らす……うーん、両目とも普段の黒とは似つかぬ紫色。
問題の右目は……どうだろう。目をじっくり凝らして、乗り出して、見ようとする。すごく頑張ってククールが落ちないようにしてくれた。……バイキルトしたら、どうだろう。ともあれ、ありがとう。
「……先客かの」
ん……これはマホトーン?瞳の奥に何故か明るい光がチラチラしている、と思って見てみればそれは……エルトとかが使えるマホトーンの特徴的な光にしか見えなかった。それはずっと、ずっと、何度も何度も繰り返して。じっと見ていればどうしてか、マホトーンはどんどん大きく見えていく。右目で踊る魔法は体も、足も、腕も……つま先や髪の毛にも宿っているように見えた。
私はずっと全身を繰り返し繰り返しマホトーンをしてるってこと?そういう、特異体質ってことなのかな?だから私は魔法が使えないの?でも、マホトーンされたからといって魔力がないわけじゃない。魔力が出力されないから魔法が唱えられないだけで……魔法使いにはマホトーン状態の人の魔力が分かるって、本で読んだんだ。
「取り込み中、失礼するぞ」
後ろから聞こえた声。聞き慣れぬ声にびっくりした。いくらよくわからない状況になっているとはいえ人の気配に気付かないなんて……私、もっと鍛錬が必要だな……。じゃなくて。この人が探してたご隠居さんってこと?
「旅の方、この泉に来られるのは初めてか?」
「えぇ、あなたを訪ねるために来たので」
エルトが剣から手を離し、警戒を解いて答えた
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