69話 「彼女」
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それで僕は、トウカに謝られるだけとか、絶対にあってはならない。僕こそ気づかなくて……あぁ、トウカは今、おかしな方向に罪悪感を募らせているんだろうな……。
「トウカ」
「なんだいゼシカ」
「声は……どうなっているの?見た目が女の子っぽくても声であたし達は男だって思ったのよ」
「あぁ、これ。変声機能付きのチョーカーだよ……外そうか?」
「……えぇ」
そういうことか……それなら確かに声変わりの時期に付け替えれば分からないもんね……。もともとトウカは首に何かしら巻いていたから全く気づかなかったんだ、違いに。
しゅるりとチョーカーを外すと、下からは大きな傷跡が見えた。古い傷だ……もしかして、それを隠す意味もあったんじゃ……。はっと息を呑んで、みんなでトウカにもの言いたげな視線を送る。すると泣きそうな笑いをはりつけたトウカは誰がどう聞いても可愛らしいと答えるであろう少女の声で答えてくれた。甘やかな高い声だ。
「この声だったら、隠しようが無いだろ?口調は勘弁してくれ……出来ない事もないが、虫酸が走るから……」
……えっ、どうしたのククール、いきなり胸を押さえて身悶えしないで!なんなの、病気?怪我でもしてたの?ゼシカ!したり顔で頷いてないでなんとかしてよ!ほら、トウカも心配してるし!
「大丈夫……?ククール。もしかして、私に失望したのか?」
「ぐふっ……そうじゃない、そうじゃないから気にすんな……」
「そう?」
こてんといつもどおり首を傾げて、身長の関係で見上げているトウカが納得がいかないように頷き、ぶるぶる震えているククールがにやけとも歓喜ともつかないかなり危ない顔をしているのに、まだ心配している。トウカが危ない……?いやいやいや、危ないのはククールだよ。その顔、トウカにもし撃退されたら死ぬのは君なんだよ?さっきからなんでそんなに嬉しそうなのさ……。ゼシカが笑い転げてるけど、ねぇ、どうしたのさ!
「……トウカの姉御」
「ペテン師の私にそんな敬称付けなくていいよ」
「関係ないでがすよ、あっしの命の恩人なのは……。あっしは気付いたんでがす。トウカの姉御は一度もあっしに女だとも男だとも言ったことはないんでがす。勝手に勘違いしたのはあっしでやす」
「……よく気付いたね。声まで変えておいて何を今更って感じだけど……一応、生まれて此の方言った覚えはないんだよね……」
「だから姉御が気を使う必要はないんでがすよ」
「ありがとう。……でも私は、」
「ヤンガスの言う通りよ。トウカに助けられてきたあたしたちが文句を言う筈ないじゃないの!」
呆然とした顔のトウカとか珍しい……。言い切ったゼシカの顔を見つめ、狼狽えているなんてね。もちろん僕だって……そういえば面と向かって言われたことないな。それどころかいつ
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