68話 因縁
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トウカが……なんだか泣きそうだ。あのトウカが。小さい頃、むしろ僕の面倒まで見てたトウカが。泣いているのを見たこともないのに、何故僕はそう思ったんだろう。
「お前にこの剣が振れる?お前は魔物を素手で殺せる?魔法が使えないなら、魔法並みの破壊力を得ようとした私は、どれだけ苦労したと思ってるの?兄上の代わりになる為に、私は『ボク』であり続けたんだよ?みんな、みんな騙して!エルトも、陛下も、姫も!みんな騙して生きたペテン師なんだよ?お前は……平気だよね?私は覚えているからな!赤ん坊の私を刺したお前の顔をッ!」
「……ぁ……」
「分かるのか?父上や母上に見捨てられないように血反吐を吐いて努力した私の気持ちが!お前が、右目も見えて、魔法も使えて、両親が分かるお前がどれだけ羨ましかったか!なのに、お前は!」
恐怖でぐちゃぐちゃの顔になったライティアは、震えながらトウカを見ることしかできなくなったようで、その様子を見てトウカは少し冷静になったらしい。地面に突き刺していた足を無造作に引き抜き、剣にかけていた手を下ろし、はぁ……と一息吐いてみせるぐらいには。
「……なぁ、ライティア。お前の見ている『未来』とやらとこの世界がずれているのになんで気づかない?お前、私と兄上を見間違えただろ?人一人殺す覚悟ができるほど好きなのに」
「……、ずれてなんか……」
「はっきり言えよ!」
「ずれてなんかないわ!あんたが死ねば全部うまく回るの!ルゼル様は、ライティアの王子様のルゼル様はとても強くて、とても優しい!だから、『トウカ』なんか!『真なる主』になんかじゃなくてライティアに優しくしてくれたりしたほうがいいんだわ!だって『トウカ』はルゼル様が守らなくたって強いもの!」
……どういうことか、僕には分からなくなってきた。双方の言ってることが理解の範疇を超えているっていうか……。とりあえずライティアが無茶苦茶なことを言っていて、トウカの心を抉っているのは分かっているけれど……。
「現実を見ろ。兄上は……兄上は私とて望んでいる……。だけど、兄上はこの世におられないんだ。それを理解しろよ、兄上のためにも!」
「ルゼル様はご健在よ!ライティアの知っているのよ!体が丈夫でないルゼル様は三十歳でご病気で亡くなると!だからライティアはお薬も既に手配できるようにしておいたわ!」
「お前は兄上を見たことがあるのか?!私がどうしてこの格好をしているのか分からないのか?自分の身を守るためを言い訳にした、兄上の成り代わりだ!」
「そんなこと知らない!あっちへ行ってよ、この、捨て子ッ!」
「……遅いな」
放たれた悪意の魔法をトウカは切り捨てて、僕らを庇うように仁王立った。
・・・・
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