67話 血脈
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
見えないの」
「存じ上げております、叔母上」
「……その声は、トウカちゃん、かしら?……ここに来ちゃいけないのは分かっていたわよね?」
うん、確かに小さい時は何があってもヴェーヴィットに行くなとは言われていた。でも正直目を瞑っても「あいつ」ごとき、魔法を使われても勝てるんだよね……警戒は必要だけど過剰なのはいらないと思うよ。「あいつ」、考え方短絡的だし。自室のベッドで寝てても暗器をキャッチアンドリリースして暗殺者を殺してしまう私だよ……?普段ろくに運動もしていない、魔物と戦ったこともない貴族の令嬢に負けるほど弱いつもりないから。「あいつ」相手に慢心はしないけど。
「……ちゃん付け……あのトウカがちゃん呼び……」
「別に俺は変でもないと思……いや俺は何を」
「ククール、正気に戻りなさい」
君たちは事をこれ以上ややこしくしなくていいから。こんなところで油売ってないで、さっさとサザンビーク王に謁見したいでしょ?
「分かっています。しかし事態は急を要しますので。先程も申し上げましたが、今すぐサザンビーク王にモノトリア長子トウカが謁見をしたがっていると取り次いでください」
「……勿論、私たちヴェーヴィットはモノトリアのいかなる命令でも従うわ」
何か言いたげな顔をした叔母上は執事を呼びつけてその次第を命令した。すぐに頭を下げた執事が頭を下げて屋敷の奥に消えていくのを見送っておもむろに叔母上は口を開く。
「……、トウカちゃん。薄々わかってるかもしれないけれど」
「ライティアが何かしたのですか?」
「ええ。あの子はとうとう……幻覚まで見始めたみたいよ……その、亡きルゼルくんの……」
「……」
……暗に屋敷に入らない方がいいってことかな?それとも早くここから立ち去れってこと?どっちでも構わないけど……。にしても、産まれもしなかった兄上、姿も見たこともない、名前しか知らない相手に……そこまで懸想できるのって……。
「ちょっと、それでね……。……ああ」
屋敷の中からばたばたと激しい格闘音と、下品な甲高い叫び声、それから魔法が炸裂したのか爆発音まで聞こえてきたんだけど……。もしかして、最近、「あいつ」を押さえ込めてないの?仮にもモノトリアの血を引いているのに?私と違って、叔母上も叔父上も魔法の適正あるでしょ?「あいつ」よりもさ。おかしいなあ……。
「……みんなは下がっていて欲しい。私の問題だし、『あいつ』、弱いから……」
バキィッ!
そこまで言ったところで頑丈そうな扉が弾けるように開き、露出過多な紫色のドレスの女が飛び出してきたのを見て私は皆を背にして構えた。一応、剣は抜かないで。
「ルゼル様!お会いしとうございました!」
「……」
「ああ!クールなところも格好いいですわ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ