1部分:第一章
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いいわ、デコレーションも立派だし」
黒いチョコレートの上に銀色の砂糖やホワイトチョコで色々と書いている。ドイツ語だ。その周りにクリスマスケーキの様に色々なデコレーションを置いているのだ。
「味もいいしね。何でも奇麗だからいいわ」
これが香苗の評判だった。彼女はとにかく奇麗なものが好きでいつもそれに囲まれていた。しかしそんな彼女にも一つだけそうではないものがあった。
「おい、飯」
「はいはい」
キッチンにのそっとした感じで出て来たのは黒いジャージを上下に着てぼさぼさ頭に眼鏡の太った中年の男だった。如何にも今起きてきたという感じだ。
「もうできているわよ」
「メザシか?」
「メザシってねえ」
今の彼も言葉にむっとした顔で応える。
「お昼よ。お昼で何でメザシなのよ」
「食えればいい」
だが彼はぶっきらぼうにこう言うのだった。
「それでいい」
「それでいいってあなた」
うんざりした顔になって彼を夫と呼んだうえでまた言う。
「ちゃんと味にも栄養にも気を使って作ってるから。お昼だって」
「そうなのか」
「そうよ。お家にいる時はね」
そのうんざりとした顔で述べる。
「私いつも考えて作ってるじゃない」
「まあだったらいいけれどな」
「ええ。それであなた」
「何だ?」
半分寝たような顔の夫に対してまた声をかけた。夫は今ゆっくりとテーブルに着いていた。
「原稿は書き終わったの?」
「まあな」
ぶっきらぼうな返事であった。
「後は送るだけだ」
「そう。じゃあ後は」
「食って寝る」
またぶっきらぼうな返事が香苗にかけられた。
「疲れたからな」
「ちょっと、そんな生活していたら」
香苗は眉を顰めさせて夫に対して言う。
「太るわよ。身体にもよくないし」
「いい」10
「いいって。そんなのだから」
「そこまで太っていないからな。じゃあ飯は勝手に食うから」
「全く」
結局一人で食べ終える夫だった。香苗はそんな彼をうんざりした顔で見ていた。そうして遂にたまりかねたように口を開くのだった。
「全く。最近酷くない?」
「酷いって何がだ?」
「結婚した頃ってこんなのじゃなかったじゃない」
こう彼に対して言うのだった。顔を見上げた夫に対して。
「すらりとしていてハンサムで。服だっていつもワイルドなので決めていて」
「そうだったのかな」
「そうよ。それがどうしてよ」
またうんざりした顔で言ってきた。
「こんなにぶくぶくって」
「仕事に関係ないからな」
それでも夫は言う。無造作に近くにあるものを食べながら。
「だからどうでもいい」
「どうでもいいって」
「書ければそれで生きていける」
彼は言った。
「容姿なんか関係ないだろ」
「そうは思わないけれど」
「御
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