第一章:大地を見渡すこと 終
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ど到底無かったらしい。
仁ノ助が勃起し初めたそれを隠す前に、詩花は目敏くそれを見つめてきてしまった。顔には別の赤みが増してきており、若干開けられた口からはどうしようもない怒りが毀れ始めている。それを発するが如く彼女は寝台の上から飛び上がって、地面に倒れて腹を押さえる仁ノ助に向かって見事な蹴りを繰り出してきた。
「こんのぉ・・・・・色ボケェェェェェ!!!!」
「イヤアアアアアアア!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まぁ、あれは仕方ないわよね。あんたも男だっていうことを完璧に忘れてたわ」
「だからといって蹴りまでいれ・・・・はい、いれますねごめんなさい。ですのでそれはやめて下さい」
中原美人の頭蓋を複雑骨折させるような拳を構える詩花に、仁ノ助は頭を下げて懇願する。彼女は過ぎたことを煮え返す性はなかったのか、笑顔をたたえたまま拳を解いて彼の隣を歩く。しかし彼にとってはあれを過ぎた事とするには、先ず痛覚を遮断することが先である。ズキズキと痛む腹は、彼女が拳だけでなく蹴りにおいても日々研鑽していたことを否が応でも伝えてくる。
頭を上げて彼女を見遣りながら彼は歩みを止めずに話しかける。
「で、なんでついてくるの?」
今彼は明日の出立に備えて街中で買い物をする最中である。本来なら彼女が一緒についてくる必要も無いわけだが、夜寝る間際に予定を話してしまった手前、一応ついてくる権利は彼女にもあるわけだが、念のためその訳をきいてみた。
「う〜んと、あれから考えたのよねぇ・・・・・・」
宙を見据えてあごに手をやって考える姿も中々にさまになっている。目を閉じて顔の笑みをそのままにしている。
「色々とこれからどうしようか考えたのよ。家に帰ろうかなーとか、此処で働こうかなーとかね。それで、『冒険譚の一つくらいなきゃ家に帰れない』って思ったの」
「なんでそうなるの!普通真っ直ぐ家に帰ったりするでしょ!?」
「あたしはそう思わないの。んでね・・・・・・」
彼の突込みをあっさりと受け流して彼女は閉じた目を若干開けて見つめてきた。悪戯めいた光が漏れ出しているのを察してイヤな予感が背筋を走る。
「あんたについていったら、正に渡りに船かなって考え付いたの。だからこれからよろしくね」
「・・・・・・えー」
半ば予想していたことが案の定その通りだったことにやっぱりといった気持ちとなる。自分の買い物についてくる彼女はこれからの仁ノ助の旅に同行する気持ちで付き合っているのだ。
実家から飛び出して町を転々として、更に見知らぬ男について旅を続ける。正直彼にはそれが無謀なことだと思った。
これから先、先ず最初に彼がすることといえば黄布の乱に備えて十分な準備を整えて、その後皇帝からの命を受けて
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