64話 霧
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どうせ、戻されるんだがな……」
ため息混じりに言われた言葉は本当で。注意しいしい入っていき、そのまま帰ってきた私たちの間抜けヅラを彼らはまた、諦めたように息を吐いて見ていた。
ちょっと、警戒しても損しないんだからそんな哀れみの目で見ないで。
え?何さ、そこのくぼみがどうしたの?そこになんか嵌めるの?……ラーの鏡、でしょ?神話の相場でいけば。なんで知ってるかって?それはボクだからだよ。……あーー……持ってる国、そういえば……サザンビークじゃないか。行きたくない国だ……。え、ラーの鏡じゃないの?太陽の鏡?ふーーん……似たようなものでしょ?え、単なる別名?……やっぱりそうじゃないか!
・・・・
「……次の目的地は、サザンビークです。国宝である太陽の鏡を譲って頂かなくてはなりません」
「うむ……分かっておるな?」
「はい。トロデーンの現状については決して話しません。……しかし、私の名前を明かした方が話は進めやすくなるかもやしれませんが」
「……モノトリア家長子は修練の旅に出ているのであろう?」
「はい、陛下」
船の上の主従の会話を盗み聞いていた、紫の影が空に飛び立ち、目にも止まらぬ速度で飛びさっていったことを、誰も気づかなかった。
ーー聞いちゃった!アハハ、聞いちゃったぁ!!アタシの恰好いい未来の旦那様、やっとアタシのところに会いに来てくれるんだね!うふふふふ、準備しないと!ドレスもアクセサリーもみんな新調しなくっちゃ!
ウキウキと胸を踊らせ、空を駆け抜ける女の名は、ライティア・ヴェーヴィット。十八年前にトウカを刺してモノトリアから、トロデーンから追放された狂った女である。
ーーやっぱり危険なところには情報あり!ルゼル様の為ならば、アタシは何だってするの!邪魔なあの娘はいないんだ!ルゼル様に妹はいない!なら、アタシが、アタシこそが……モノトリアの姫なんだから!
モノトリア家。近親相姦によって血を保つ、狂った側面を持つ名家。その成れの果てが、ライティアという……中途半端に予知能力を備えた女を生み出した。微かに狂った世界を読み、それを信じて疑わない女……所謂行き遅れである年齢の彼女は、年甲斐も無くはしゃぎ、空を飛び回っていたのだった。
手に、古い血のついたナイフを握り締めて。
・・・・
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