53話 魔声
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気のせいか?このもぐらの巣の奥から唸るような、喚くような……不愉快な音が聞こえてくるのは。仲間割れでもしてるのか?
「……うう、なんだか頭が痛い音がする」
「そうだね、なんか聞こえてくるね……」
トウカとエルトにも聞こえているなら気のせいではなかったか。……どこか嫌な予感がするんだが、当たらないことを祈るべきか。……神よ、どうか俺にこれ以上の受難を与えないで下さい……。
「あいつが、ボス、なのかなぁ?」
「デカブツでがすね」
「あの巨体に突き飛ばされるのだけは嫌だわ」
……。遠目に見えてきた、巨大なもぐ公。さっきまで俺達が倒していたもぐらとは比べ物にならない大きさに見える。デンデン竜のほうが小さいようにも思えるな……。なお悪いことに、明らかそのもぐ公の周辺から不快な音が聞こえている。
「ボクの目には、アイツが手に持っている銀色の物が月影のハープじゃないかなって思うんだけど」
「多分、正解じゃないかな」
「アイツを倒すのか?」
「平和的解決を目指すけど、多分……。魔物って言葉は通じても意思疎通を図る前に攻撃してくるし」
今のうちにスクルトをかけるべきか。もう俺は剣士像の洞窟の時のように、息をつく間もないほどベホイミもベホマも唱えたかないぜ……。最近の俺の役目は動く特薬草だからな……剣は抜いているが、斬りつけるよりも魔法を唱えてばかりで、魔法の聖水の栓を抜く方が板についてきた気もする。
「……、耳栓したい」
「作戦が聞こえないからやめてね、気持ちは分かるけど」
「うん。……ねぇ、もしあの音でボクが錯乱したら躊躇せずに殴ってね」
「そんな不吉なこと言わないでよ」
「直感だけど、月影のハープが普通の楽器じゃない以上、あの破壊音に何か追加効果がありそうでさ……」
「……。ククール、覚悟しておいて」
そんな引きつった顔でこっちを見るな。恐る恐る魔法の聖水の残数を確認するな。
・・・・
もぐらとの交渉はそもそもなかった。というか、問答無用でもぐもぐ言いながら襲ってきたし。襲ってきた巨体を前に、反撃をしないという選択肢はないから、盾と剣を両方構えて突撃……しようとしたんだ。
あのデッドボイスといえる破壊的な歌声、優美な楽器を手荒に扱い、どうやったらあんな音が出るのか分からないようなキーキー音のコンボは……別に私達の精神に影響はなかったみたいけど、しっかり影響は出したみたいで。
「……あれ?」
「まっすぐ立っていられない……」
確かに私はボスの首筋を狙って飛びかかったはず。でも、平衡感覚とかが麻痺した私は三十センチは狙いが逸れたみたいで、もぐらの毛皮に薄い筋を付けただけに過ぎなかった。ダメージはなさそうだ。
「……数撃ちゃ当たるっ!」
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